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インタビュー

JOHNNY FOREIGNER


  〈ポスト・リバティーンズなんかではなく、ポスト・クラクソンズなんかでもない〉――これはピッチフォークに書かれていたバンド紹介の一節だが、チクショウ、まさにそのとおり! 動脈硬化を起こしている現在のロック・シーンを活性化させるべく登場した、あまりにも魅力的なインディー・バンドを紹介しよう。いま話題のベスト・ビフォアから飛び出した3人組、ジョニー・フォリナーである。彼らを聴かずに、現在のロックに満足してはいけない。

 「〈誰々みたいになりたい!〉とか、そういう気持ちは特になかったよ。ただブロークン・ソーシャル・シーンやキンセラ兄弟(ジョン・オブ・アーク)の、次々と特別で新しい、いろいろな種類のサウンドを生み出していくスタイルはすごく尊敬しているけどね。リバティーンズやクラクソンズなど、ちょっと行きすぎた感のある〈ロック・レジェンド〉からはできるだけ距離を置くことにしているよ(笑)」(アレクセイ・ベロウ:以下同)。

 ロス・キャンペシーノス!やブラッド・レッド・シューズをはじめ、UKロックよりもUS~カナダのインディー・ロック・シーンとコミットしたUK発の新人バンドが今年に入って勢力を拡大しているが、彼らもそのひとつに数えられる存在だ。ひしゃげたノイズをヒステリックに鳴らし、創造的で性急なリズムと音圧も併せ持つ。サウンドの魅力を一言で語り尽くすことは難しいが、〈ポスト・ハードコア第3世代による、90年代USオルタナの再発見〉とでも表現すれば少しは伝わるだろうか。しかし注目すべきは、〈彼らの生み出すメロディーはすべてが開放的で、死ぬほどポップでキャッチーだ〉ということ。達者な演奏力に負けないくらいインパクト大な男女ヴォーカルの掛け合いはあまりにもスリリングであり、バンドの持ち味だといえよう。完成したばかりのファースト・アルバム『Waited Up 'Til It Was Light』は、昨年リリースのEP盤『Across The City』以上に野心的でポップな仕上がりとなっている。

 「メロディーとリズム、そして言葉。これら3要素が俺たちの音楽には重要なんだ。俺たちのなかでメロディーは独立したものじゃなく、常にコードと対になっているものだと考えているよ。そしてノイズを使うのは、そのメロディーをより楽しむための手段って感じかな。わかりやすいポップなメロディーを魅力的にするためには、どういう飾り付けをするべきか……まるでオシャレぶった趣味の悪いヤツみたいだけど(笑)、そこは常に挑戦だね。レコーディングはかなり強烈な経験だった。ヴォーカル録りのためにわざわざパーティーをやったんだ。そうそう強烈な経験といえば、この前ロス・キャンペシーノス!とNYで共演したよ。僕らにとっての初のUSライヴだったから興奮したね」。

 ここに詰め込まれた楽曲は、〈中庸〉や〈ほどほど〉からは程遠く、ましてや〈退屈〉なんて言葉の対極に位置している。ただ、こんなにも充実したアルバムを前にしても、彼らは吼えることを止めない。そう、愛すべき音楽オタクたちなのである。

 「まだまだでしょ! 俺たちは満足することを知らないんだ!! スタジオに戻って永遠に自分たちのリミックスをすることだってできるしね。それが本当のアーティストの証だって思いたいけど、ただのバカってことかもしれないね(苦笑)。アルバムの出来には最高に満足しているし、実際に聴いた時は……自分で言うのもなんだけど鳥肌モノだったよ。こんなにハッピーな一枚を作れた自分たちを誇りに思うよ!」。

PROFILE

ジョニー・フォリナー
アレクセイ・ベロウ(ヴォーカル/ギター)、ケリー・ザウザン(ベース)、ジュニア・レイドリー(ドラムス/キーボード)から成る3人組。2006年初頭にUKはバーミンガムで結成。同年夏にファースト7インチ・シングル“Sometimes, In The Bullring”を限定でリリース。以降、地元を中心に精力的なライヴ活動を行うようになる。2007年にベスト・ビフォアと契約を結び、EP盤『Across The City』を発表。同作が「Kerrang!」誌の〈Album Of The Month〉に選ばれるほか、各メディアから好評を得る。今年に入ってシングル“Our Bipolar Friends”がヒットを記録。このたび6月4日にファースト・アルバム『Waited Up 'Til It Was Light』(Best Before/FABTONE)をリリースした。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年06月12日 21:00

ソース: 『bounce』 299号(2008/5/25)

文/冨田 明宏