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インタビュー

Immigrant's Bossa Band


  〈はたしてImmigrant's Bossa Bandってお洒落なんですかね?〉――編集部員の発したそのひと言にハッとした。確かにカフェに似合うブラジリアンやボサノヴァってお洒落っぽく聴こえたりする。でもそれって、まさにリスナーに刷り込まれた〈縛り〉なんじゃ? では、ここではっきり言いましょう。Immigrant's Bossa Band(以下IBB)は半端にお洒落な人たちではありません。汗を誘い、心のヒダに揺さぶりを掛け、男泣きさせてくれるバンドマンたちなのだと!

 「実際CDとライヴでは〈別人か?〉って言われますから(笑)。ステージでは自分たちから湧き上がってくるものを、ただガムシャラにぶつけている感じです」(Sugames Japon)。

 「ライヴは基本的に何でもあり。何をやってもいいけどそこは自己責任です。みんなもともとは畑が違って、僕はDJだしメンバーはそれぞれジャズ、ロック、ラテン出身とさまざま。バンド名の由来も、多種の文化が流れ込むという意味合いで〈immigrant(移民)〉という言葉が入ってたりするんで。いろんな音楽を僕たちのフィルターを通じて出して、ありそうでなかったものを作れたらと思います」(NOBU)。

 もちろんIBBのウリはミクスチャーだけではない。コンテンポラリーな感覚でいわゆるクラブ・ジャズなどともリンクしながら、味わいと歌心で聴くものをホットにさせる。それを先導するのがフロントマン、Rayの歌世界だ。

 「歌詞はまったくの我流なんですよ。もともとスキャットが好きなんで、そこから響きを重視しながら言葉をコラージュしていくようになった感じでしょうか。自分としては聴いてジワッとしてくれれば何よりです。でも詞って、自分のそのままが出ちゃうから何とも恥ずかしくて(笑)」(Ray Tekuramori)。

 IBBの音の波にRayが這わせる日本語の歌は、まっすぐでロマンティック。そして温かい(いいノドしてます)。歌メロを主体に彼が書いた曲をバンド全体で練り上げていくのが基本だが、作曲に長けたLUIGIが作ってきたデモをIBB流に色付けすることもあるという。叔父である作曲家の川井憲次、そしてアジムスやバート・バカラックへの敬愛をバンドに持ち込むLUIGIのダンサブルなセンスも要注目だ。

 「僕はもともとスタンダードなジャズをやってました。だけど、何よりもっとおもしろいことをやろうとIBBに加わったんです。特にライヴではCDとは違う変わったこともやります。そのテンションの高さをぜひ感じてほしいですね」(LUIGI)。

 さて、そんな彼らが年間60本以上のステージをこなしつつ鍛え上げてきた〈IBBクラシックス〉を再録音したニュー・アルバムが『記憶』だ。かつて自主制作されて好評を博した同名ミニ・アルバムの各曲を見つめ直し、メンバーたっての希望でリメイクしたもの。

 「表題曲の“記憶”にしても“ON LOVE”にしても、聴きどころは歌詞だと思います。でも歌詞を読んでもらっても最終的に何を伝えたいかはわからなくて、聴いた人がそれぞれにイメージできる感じ。そういうところが僕らも大好きなんです。踊れる曲も多かった前作や前々作に比べると、格別〈クラブ〉を意識していないので、よりリスニングに重きを置いている聴き手に届いてほしいですね」(NOBU)。

 ブラジリアン・ハウス的なグルーヴでオープニングを熱く飾る“BONITO”に続くのは、〈じっくりと聴かせる〉という側面にフォーカスした名曲たち。ストレートに胸にくる、IBBの豊かなヴァイブスをここでぜひ受けとめてみてほしい。

PROFILE

Immigrant's Bossa Band
Ray Tekuramori(ヴォーカル/ギター)、NOBU(パーカッション)、Sugames Japon(キーボード)、LUIGI(ベース)、Tatsu(ドラムス)から成る5人組。2003年にRayとNOBUを中心に東京で結成され、ライヴ活動を開始する。2005年にファースト・ミニ・アルバム『記憶』を自主リリース。2006年に現在の編成となり、ファースト・フル・アルバム『Sustained Affection』、翌年セカンド・アルバム『MESSAGE』をリリース。並行して小林径による〈Routine Jazz〉や須永辰緒の〈夜ジャズ〉といったクラブ・イヴェントに数多く出演し、広く注目を集めていく。6月6日にファースト・ミニ・アルバムの楽曲を再レコーディングしたニュー・アルバム『記憶』(DIW THE GARDEN)を発表した。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年06月19日 04:00

更新: 2008年06月19日 17:20

ソース: 『bounce』 299号(2008/5/25)

文/池谷 修一