インタビュー

RUDEBWOY FACE


  マイク持ち歴10年にして27歳という若さ。〈ヤンゲスト・ヴェテラン〉――人はRUDEBWOY FACEのことを、そう呼ぶ。初のレコーディングは17歳の時。「デビューしたいけど、どうやったらいいかわからなくてデモテープを送りまくってた」ところへ、高宮紀徹(Reggae Disco Rockers)から声がかかり、彼がプロデュースするコンピなどへ参加。シーンでは異例となる〈ヤンゲスト〉としてデビューを飾ることとなった。そして同時期にデモテープを聴いた、かの日本レゲエ界のドン、RANKIN TAXIからもエールの手紙が到着。〈絶対、勝ち上がってこい!〉――そんな身を震わすようなメッセージに「やってやる!」と闘志を掻き立てられたという。

 レゲエDJとして勝ち上がる。その時に誓った志がいかに強固なものだったかは、以降の10年がきちんと物語っているように思う。「俺はレゲエ・アーティストだから甘ちゃんなことは絶対したくない」と語っているとおり、いかなる作品/現場であろうと一瞬たりとも油断をしない、そんな常に緊迫感のある彼のDJスタイルには、人を惹きつける強烈な〈何か〉があった。「どんなサウンドに載せても俺が歌えばレゲエになる」という言葉も、これまでヒップホップやR&Bなど、レゲエ以外の作品で見せた客演仕事でしっかりと証明されている。新作を出すたびに進化するマイク・スキルにしろ、常に新鮮さを失わない変幻自在な歌い回しにしろ、そういった天性ともいえる才能は、移りゆくレゲエ・シーンのなかにおいて常にひときわ輝いていた。それこそ、彼の異名が〈天才DJ〉である所以だろう。

「リディムがあれば必ずメロディーが湧いてくる。〈みんなも普通に出てくるでしょ?〉ってくらい俺のなかでは自然なこと。基本的に予想を裏切りたいんです。常に新しいフロウ、新しいスタイルを追求したいんですよ。飽きさせたくない、マンネリ化したくない。そこは大事にしてますね」。

 このたびのサード・アルバム『a message to...』は、まさしくそんなニュー・スタイルを堪能できる内容になっているのだが、実はこれ、彼にとって初のメジャー作。「特に意識せず、やりたいようにやれた」というが、メジャーで出すことが〈レゲエをよりいっそう広めるためのチャンス〉と捉えたうえでの、彼なりの仕掛けも込められているそうだ。たとえば、ACOを迎えたミニー・リパートン“Lovin' You”のカヴァーについて。

「誰もが知ってる名曲ですよね。それをキャッチーなラヴァーズに仕上げたから、ポップに聴けちゃう。けど、自分がやってるのは実はオールド・スクールなDJのトースティングっていうスタイルなんだぜっていう。そういうバランスは俺のなかでかなり大事。聴き手が入ってきやすいところも作りたいけど、ただ〈楽しいね〉っていうノリだけで終わるのは嫌なんで。俺のベースはアンダーグラウンドの現場。だから、そういうマニアックな部分を出すことで、みんなが〈なんだ、これ?〉って引っ掛かってくれたら、より深くレゲエを知るきっかけになると思うんですよ。そこがいちばんの目的ですね」。

 レゲエを深く知る──確かに彼が言うとおりのアルバムだと思う。

「この間、DVD〈ルーツ・ロック・レゲエ〉を観てたら、ジミー・クリフが〈世の中の矛盾、愛を歌うのがレゲエだ〉って言ってて。その言葉を聞いて〈俺、間違ってなかったんだな〉って。今回のメッセージってまさにそこじゃないですか。だから〈俺のアルバムはやっぱりレゲエなんだ〉って確信できて、すげえ嬉しかったんですよ」。

 レゲエを愛し続け、そこに情熱を注ぎ続けてきたRUDEBWOY FACE。『a message to...』を聴けば〈日本一ラガな男〉――そんな彼のもう1つの異名にも納得できるはずだ。

PROFILE

RUDEBWOY FACE
80年生まれ、横浜出身のレゲエDJ。高校生の頃からマイクを握り、地元のクラブを中心に精力的なライヴ活動を展開。2001年にファースト・ミニ・アルバム『Warning』を発表。同時期にBoAやMiss Monday、麻波25の作品に客演し、多方面からも注目を集めるようになる。その後も年間100本以上のライヴをこなす一方で、“ANTHEM”などヒット・シングルを量産。2006年にファースト・アルバム『RUDEBWOY』をリリース。続く2007年には、セルフ・プロデュースによるセカンド・アルバム『RUDIES』を発表。今年に入ってメジャーに移籍。先行シングル“Lovin' You”が話題を呼ぶなか、このたびサード・アルバム『a message to...』(コロムビア)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年06月26日 16:00

ソース: 『bounce』 300号(2008/6/25)

文/岡部 徳枝