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インタビュー

THE TING TINGS


Photo by Ryota Mori

  先行シングル“That's Not My Name”と、ファースト・アルバム『We Strated Nothing』が共にUKチャートでいきなり初登場1位をマークするなど、早耳リスナーの間ではすでにお馴染みの男女ユニットですが、ここで改めて紹介させてください。キュートでポップでファッショナブルで、誰でも無条件に楽しめちゃうのに、「制作に2時間以上かかった曲は消去する」(ジュールズ・デ・マルティーノ)というストイックでアンビヴァレントなアティテュードを持つ、その名もティン・ティンズ。彼らは音楽都市として名高いマンチェスターからある日突然現れました。700枚限定で発表された7インチ・シングル“Fruit Machine”が評判を呼び、たった4回のライヴを経験しただけなのに〈グラストンベリー〉に出演。そんな話題性も抜群なこのユニットを、世のマスコミが放って置くはずもないわけで……。

「世界中の音楽雑誌、ファッション雑誌から〈2008年ブレイク確実!〉と書かれていた時期ってちょうどツアーの真っ最中で、実はあまりよく状況をわかっていなかったのよ。友達からメールで〈ラジオで曲が流れてたよ!〉とか〈記事を読んだよ!〉とか教えてもらっても、正直〈へ~〉って感じだったわ」(ケイティ・ホワイト)。

「やっとアルバムがリリースされて、徐々に実感が出てきたって感じかな。でも、そういうマスコミの声が届かない状況でアルバム制作やツアーができて、本当に良かったよ。だって、それがプレッシャーになっていたかもしれないからね」(ジュールズ)。

 2人のフェイヴァリット・アーティストはヤー・ヤー・ヤーズにトーキング・ヘッズ。何となくお里が知れるチョイスですが、彼らにとって音楽はアーティストとしての表現活動の一環であり、音楽そのものに帰属するという意識は低いよう。

「ミュージシャンらしい生き方とか、そういうのにはほとんど興味がないな。実際、ミュージシャン以外の友達が多いし、音楽をアートの一部分と捉えているんだよ。というのも、以前やっていたバンドでは、音楽を追求しすぎて疲れてしまったんだ。音楽に対する情熱はあるけど、エキスパートではなく、すべて実験的なチャレンジ精神で取り組んでいる。今回のレコーディングに関してもプロデューサーを立てずに、録音もすべて試行錯誤しながらやったし、アートワークもパーティーも、すべて自分たちで手掛けた。活動をミュージシャンとして限定しないからこそ、ここまで自由にやれたんだと思うんだ」(ジュールズ)。

 彼らにとってアート、特にファッションは重要な表現方法であり、なかでもケイティのファッション・センスには、いま世界中から注目が集まっています。

「ファッション方面から注目されるのはとても嬉しいわ。だって、すごくクリエイティヴな世界だし、私自身も自分で着たい服やコスチュームはみずから作るしね。ファッション・ショウでグラマラスなモデルがティン・ティンズの音楽に合わせて颯爽と歩いているのを観た時は、すごく興奮したわね!」。

 中毒性の高いエレポップ・サウンドと実験的なDIY精神は、ファッショナブルでありながらも〈いまを切り取る〉という焦燥的なパンク・スピリットも漂わせています。そんな彼らが、記念すべきbounce300号の表紙を飾ってくれました。本人にその感想を訊ねてみると……。

「すごく光栄よ! 自分たちの前にもたくさんのアーティストが表紙を飾っていると思うけど、〈The Ting Tings〉なんて、日本語にしたら恥ずかしい意味になっちゃう名前のバンドは、きっと私たちだけでしょ(笑)」(ケイティ)。

 カワイイ顔して、最後は下ネタですか。

PROFILE

ティン・ティンズ
ケイティ・ホワイト(ヴォーカル/ギター/ベース)、ジュールズ・デ・マルティーノ(ドラムス/ヴォーカル)から成る2人組。デパートに勤めていたケイティと別のバンドで活動していたジュールズがクラブで意気投合し、2006年にUKはマンチェスターで結成。2007年にファースト・シングル“Fruit Machine”を発表し、〈グラストンベリー〉への出演も果たす。2008年3月にシングル“Great DJ”でメジャー・デビュー。続く“That's Not My Name”で本国のシングル・チャート初登場1位を獲得するなどさらなる話題を集めるなか、5月にファースト・アルバム『We Started Nothing』(Columbia/ソニー)を発表。このたびその日本盤がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年07月03日 23:00

更新: 2008年07月07日 15:41

ソース: 『bounce』 300号(2008/6/25)

文/冨田 明宏