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インタビュー

POP LEVI


  あきらかに時流を無視しまくったサイケデリック・グラム・チューン満載の奇特な傑作『The Return To Form Black Magick Party』でデビューを飾ったポップ・リーヴァイが、約1年という短いスパンでニュー・アルバム『Never Never Love』を上梓した。しかもどういうわけか、彼はここしばらくミッシー・エリオットやマイケル・ジャクソンばかり聴いていたらしいのだが、そうしたR&B嗜好を如実に反映した極めて今日的な作品が完成したのかといえば、確かにそうした方向に舵を向けているように聴こえつつも、やはりどう聴いてもR&Bとは言い難い、ストレンジでキッチュなリーヴァイ印のポップスに仕上がってしまっているから痛快だ。この男、一筋縄ではいかないぜ。

「前作は湯水のように湧き出るアイデアをとにかく詰め込んだ感じだったけど、今回はロック・ミュージシャンがR&B作品を作ったような感じだな」。

身もフタもない説明だが、まあ待て。もう少し話を聞いてみよう。

「ロックでは演奏やプレイヤーが重要だけど、R&Bはサウンドそのものがより重視されているように思う。だからこのアルバムでは以前にはなかったようなクリーンで緻密なサウンド作りをめざしたんだ。そうすることで、さらにディープでリアルなものが出来たと思ってるよ」。

確かにヴィンテージ的な直感主義に貫かれた前作のサウンドに比べると、本盤では格段に練り込んだ末に到達したであろう普遍性を帯びたメロディーや、モダンな音作りが際立っている。

「何かに影響を受けて自分の音楽に反映しつつ、そこからまた別のエッジの立ったサウンドを作るってのが好きなんだ。今作ではクラシック・ロックの手法にR&Bスタイルを採り入れたわけだけど、そこには俺流のマジックがあるから、決してミッシーやマイケルみたいには聴こえないだろ? だから俺は自分の音楽を〈フレッシュ・ビート〉って呼んでるんだ」。

そうなのだ。最先端の音楽スタイルを吸収しても、安直にソレをなぞっているようには聴こえない。たとえマイケルから影響を受けても、合いの手は決して〈ポォ~!〉にはならず、どうしてもマーク・ボラン風の〈フゥ~!〉になってしまうような、妙なバランス感覚こそが彼の凄さなのだ。言い替えればそれは、どうコンテンポラリーな音楽を踏襲してみても必ずキッチュな〈俺流フレッシュ・ビート〉になってしまう凄さでもある。

「今作のテーマは〈愛〉なんだ。前作は自分自身のパーソナルな感情と、それとは別に表現したかったアイデアが半分ずつ詰まっていたんだけど、今回は自分で見た夢を中心に作っているから、もっとずっとパーソナルな内容になっているね。実は俺、夢日記をつけているんだよ」。

なるほど、まさにパーソナルの権化ともいうべき夢日記がベースにあるのだから、それは〈俺流〉にもなるワケだ。ちなみにその愛の夢(歌詞)の一節を少し引用すると、〈女が欲しい〉〈半分は僕の彼女〉〈彼女は僕をボロクソに言う〉……と、同じ男として少し心配になるようなリリック満載だが、そのことには触れないでおくのも優しさであろう。代わりといってはなんだが、最後にアートワークの異様な着物姿について尋ねてみた。

「あれはハリウッドで買って、制作中にも着てたんだよ。女物なんだけど、俺は女物の服を着るのも好きなんだ。似合うんだったらルールなんて関係ないよ。だからルールなんか破っちゃえという意思表示でもあるんだ。日本には行ったことがないんだけど、だからこそ魅力を感じてしまうね。日本はエキゾティックでフューチャリスティックであると同時に、由緒正しい国に思えるんだ」。

その〈日本〉という言葉を〈ポップ・リーヴァイ〉に置き換えるとアラ不思議、それはまるで僕らが思う彼のイメージそのままじゃないか!

PROFILE

ポップ・リーヴァイ
UKはロンドン出身のシンガー・ソングライター。3歳の頃にピアノを始め、5歳で聖歌隊に参加。90年代後半にスナップ・アントとカール・ウェッブと共にスーパー・ヌメリを結成。その後、ロカでの活動を経てソロ・プロジェクトを開始。また、同時期にベーシストとしてレディトロンにも加入する。ほどなくして活動の拠点をLAに移し、2006年にニンジャ・チューン傘下のカウンターから初のソロEP『Blue Honey』をリリース。翌年にはファースト・アルバム『The Return To Form Black Magick Party』を発表し、奇抜なルックスとグラマラスな音楽性で話題を呼ぶ。7月5日にセカンド・アルバム『Never Never Love』(Counter/BEAT)を日本先行でリリースする予定。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年07月23日 18:00

ソース: 『bounce』 300号(2008/6/25)

文/北爪 啓之