インタビュー

STAN

自分たちの得意技をストレートにぶつけた、怖いものナシの新作がついに完成! どうでもいいけど最高に『ROCK』してますから!!


  強烈なバンド・グルーヴを武器に、ある意味〈やりたい放題〉の破天荒なロックンロールを鳴らしてきたSTAN。今回で4枚目となるアルバムは、彼らにとっていよいよ本領発揮となる一枚だ。タイトルは『ROCK』。シンプルな言葉が象徴するように、アルバムには力強く骨太な楽曲が並び、胸に迫るメロディーと歌声が真っ直ぐに響く。そこにあるのは3人組のバンドである彼らが持つ〈王道〉の魅力だ。

「僕はいろんな音楽が好きで、だからいままではたくさん球種を覚えたがるピッチャーみたいに、いろんなことをやろうと思ってた。だけど今回は自分の得意な球種だけに絞ろうと思ったんです」(kyg、ヴォーカル/ギター)。

 これまでみずからの本能の赴くままに音楽を掻き鳴らしてきた彼らが、かつてなく聴き手に向き合うことで生まれたという今作。楽曲のアレンジやサウンドにおいても、勢いに任せた荒削りな部分は丁寧に削ぎ落とされた。“S.T.An”や“THE FIRE”のような激しいテンションとうねるグルーヴを持つ楽曲、“アメジスト”や“時の砂”のような珠玉のメロディーに磨きをかけたナンバー。それぞれに彼らの持つ二面性がしっかりと刻み込まれている。

「昔は自由奔放にやるのがいいと思っていたところがあるんですよ。でもKYGが世界観を搾り出したから、ちゃんとやんなきゃいけねえなって気持ちになってきた。いままでより煮詰める時間を取って、クォリティーを上げたんですよね」(吉田清志、ドラムス)。

「要は真面目にやったっていう」(中嶋幸志、ベース)。

 その変化は歌詞にも表れている。デビュー作『STAN』で〈STAN マジヤバイ〉と叫んでいた痛快さはそのままに、より真摯に〈本音〉を語りかけてくる。

「最初にちゃんとやろうと思ったのは、歌詞ですね。言いたいことを全部入れてやろう、自分が歌って疑問がないものにしようと思ったから。だから今回は誠実に、整理整頓する作業をやった感じです」(kyg)。

〈「君と僕・・」とか歌ってる/よくありそうな歌は大概大した事ないんじゃない?〉(“アメジスト”)、〈どいつもこいつも本音は全員一緒だから/細部の差異など見出すのは実は野暮なことかもしれないのさ〉(“タイガーアイ”)――。世間に流通している常識や権威、その他もろもろの〈あたりまえのこと〉をすべて〈どうでもいい〉と言い切れる強さ。それがSTANの鳴らすロックが持つ魅力の根底にある。新作はそれをストレートに解き放ったアルバムなのだ。

「たぶん、いちばん俺が重要だと思っているのが〈生きるか死ぬか〉なんですよ。それ以外はどうでもいいと思っている節がありますね。明日一文無しになっても構わない、みたいな。そうすると怖いものもないし。そういうところはありますね」(kyg)。

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掲載: 2008年07月23日 19:00

ソース: 『bounce』 300号(2008/6/25)

文/柴 那典

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