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インタビュー

CSS


  「ファースト・アルバムをレコーディングした時は、どうやってライヴで演奏するのかわからなかったんだ」と語るのは、唯一の男性メンバーであるアドリアーノ・シントラ(以下同)。カワイコちゃん揃いのなか、ヒゲ面と腕に彫り込まれたタトゥーで異彩を放つあのオジサンだ。そんなシロウト同然のCSSだったが、ファースト・アルバム『Cansei De Ser Sexy』からのシングル“Music Is My Hot, Hot Sex”がTVCMに起用されるやいなや、バンドの名前はあっという間に世に浸透していった。それ以降の快進撃は皆さんもご存知だろう。ファッション業界からも注目を集め、カイリー・ミノーグやデジタリズムなどからリミックスのオファーが次々と舞い込み、世界中のフェスを飛び回った。また、昨年はクラクソンズやニュー・ヤング・ポニー・クラブらとのツアー〈NME Awards Tour 2007 Indie Rave〉でUK全土を席巻し、話題を振り撒いてもいる。

「疲れたよ! すごくタフなツアーで、当時はまだひどいマネージャーといっしょに仕事をしていたんだ。僕らにはまったくお金もなかったし、ヴァンに乗ってのツアーはすごく過酷。乗り切るのに苦労はしたけど、他のバンドの連中とすごく親しくなってよく遊んだよ!」。

 長い時間を共有できたおかげか(?)、ヴォーカリストのラヴフォックスとクラクソンズのサイモン・テイラーの熱愛という副産物まで生んだこのツアー。もちろんそれだけに留まらず、ギグ三昧の生活はCSSがバンドとして成長することにも一役買っている。ここに届けられたセカンド・アルバム『Donkey』は、パワフルで音にキレがあり、メロディーラインもいっそう強化されているため、ポップな曲はより華やかに、アッパーな曲はより勢いのある仕上がりに。残念ながらベーシストのイラチェマ・トレヴィサンは脱退してしまったが、演奏力をアップしたことでメンバー個々の才能が目を覚まし、プロデューサー主導だったファースト・アルバム制作時に比べて明確なアプローチが取られているようにも聴こえる。

「ツアー開始から2週間ほど経つと、僕たちはすごいストレス状態に陥った。金もないし、時にはすごく飢えてもいた。だから働くこと、曲を書くことで僕はストレスを発散したよ。ヴァンやツアー・バスの中、空港でも曲を書いた。その間にリミックスもたくさんやったし。本当にたくさんね! そういう行動をとったのも、〈電子音じゃなく、もっと有機的でアコースティックなものにしよう〉という今回のアルバム・コンセプトを決めていたからだと思う」。

 現在、メンバー全員はロンドンに在住。「ブラジルはとても危なくて遠い国。でも食べ物と家族は恋しいけどね」という状況に加え、ブラジルでの活動中は本当にロクなことがなかったらしい。特に周囲の人間からいろいろと災いが降り注ぎ、馬鹿げた額の借金まで支払わせられたとか。アルバム・タイトルの『Donkey』は、そんなゴタゴタに由来しているという。

「騙されて、愚かで、金ももらえないのにただやみくもに働いてた去年の僕らは太ったロバのドンキーだった」。

 彼らの音楽性からは想像し難い現実だが、いまはとてもハッピーということでひと安心。サイモン・テイラーに捧げた“Believe Achieve”(アドリアーノいわく「恋する者同士のラヴソングさ!」)が収録されているぐらいだから。さて、CSSは昨年の〈サマソニ〉に続いて、今年は〈フジロック〉へ参戦。

「CSSが〈フジロック〉で演奏できるなんてめちゃくちゃ興奮するよ! 僕らはみんな日本が大好きさ。世界中でも好きな国で、東京はお気に入りだし、1か月、いや半年くらい過ごせたらどんなに素敵だろう! 次のアルバムを日本で録音したいくらいだ。少なくとも事前準備はそっちでやりたいね。日本でわくわくしながら新曲を作れたら最高だよ!」なんて意気込んでいるから、さぞや素晴らしいステージを観せてくれることだろう。体験できる人はラッキーだね!

PROFILE

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ラヴフォックス(ヴォーカル)、アドリアーノ・シントラ(ドラムス/ベース)、ルイーザ・サー(ギター)、アナ・レゼンデ(ギター/シンセサイザー)、キャロライナ・パラ(ギター/ドラムス)から成る5人組。2003年にブラジルはサンパウロで結成。2005年10月に地元のレーベル、トラマからファースト・アルバム『Cansei De Ser Sexy』を発表。翌年7月に同作がサブ・ポップよりワールド・リリースされ、同時期にTVCMに起用されたシングル“Music Is My Hot, Hot Sex”がロング・ヒットを記録。2007年に入ると、リリー・アレンやカイリー・ミノーグ、ジャスティスをはじめ多くのリミックスを担当。このたびセカンド・アルバム『Donkey』(Sub Pop/KSR)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年07月31日 22:00

ソース: 『bounce』 301号(2008/7/25)

文/青木 正之