こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

WAGDUG FUTURISTIC UNITY

国内外の強者たちをトラックメイカーに招いた、容赦なくノイジーなデンジャラス盤。油断してると耳が〈HAKAI〉されますぞ!


  THE MAD CAPSULE MARKETSの活動休止から約2年。KYONOのソロ・プロジェクト=WAGDUG FUTURISTIC UNITYが初のフル・アルバム『HAKAI』をリリースした。高速ブレイクビーツ、歪みまくったギターやシンセ、そしてパンキッシュな歌声と咆哮――まさにタイトルどおりの衝動と激情に満ちた今作。ジャンル云々で語るより、〈ガツンとくる音〉というような言葉がいちばんしっくりくるサウンドが詰まっている。

そして、注目すべきは国境を越えて集った豪華トラックメイカー陣だ。なかでも以前から交流のあったDJスタースクリーム(スリップノットのシド#0)との共作曲“HAKAI”は、プロジェクトの方向性を決定付けた一曲だという。

「自分自身が刺激を受けられないとおもしろくないな、というのがあったんですね。もちろん自分でも曲は作るんですけど、人のテイストやアイデアで新しい発見を得られれば、1人の力以上のものができるんじゃないかと思って。そのきっかけになったのがシドとやった“HAKAI”という曲なんです」。

また、いまやエレクトロ・シーンの中心であるジャスティス“Waters Of Nazareth”のリメイク曲も収録されている。

「あのトラックを聴いた時に歌が浮かんだんです。それで、ぜひ使わせてもらえないかって関係者に話したらメンバーもOKしてくれて」。

さらには、デフトーンズのヴォーカル、チノ・モレノとの共作も実現。ヘヴィー・ロックというバンドのイメージからは想像できない、凶暴なノイズ・インダストリアルになっている。

「最近チノがトラックを作っているらしいという話を聞いて、素材をもらったんです。ただ、そこにリズムやベースを足したり、メロディーを付けたり、だいぶ編集しましたけど」。

リード・トラック“SYSTEMATIC PEOPLE”にマキシマム ザ ホルモンのマキシマムザ亮君がコーラスで参加したほか、AKIHIRO NANBA(ULTRA B-RAiN、Hi-STANDARD)やスクエアプッシャーの実弟であるシーファックスら多彩なゲストにより、1曲1曲が異なる刺激を持つアルバムになっている。しかし何より強烈なのは、この雑多なサウンドにしっかりとした統一感をもたらしているKYONO自身の存在感だろう。〈軸〉となる自身の声だけでなく、その熱い思いが、激しいテンションとなって全曲をしっかりと貫いているのだ。

「いま自分が出せるもの、自分のなかにあるものはすべて詰め込んだつもりです。ある意味、集大成を形にした感じですね」。

▼文中に登場したアーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年07月31日 22:00

ソース: 『bounce』 301号(2008/7/25)

文/柴 那典