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インタビュー

M. POKORA


  スヌープ・ドッグの“Sexual Eruption”やジャネット“Feedback”、アッシャー“Love In This Club”などに代表される、いわゆるヴァイブ・ミュージック(テクノ~ハウスを採り入れたアーバン・サウンドのこと)が明確な時代の音となった2008年。クリス・ブラウン“Forever”や安室奈美恵の新曲“Do Me More”などもそのモードに則った痛快な仕上がりですし、ここでプッシュしたい“Dangerous”もまた、ギスギスしたトランシーな音色のシンセが躍る最高のアップ・チューンです。で、一聴してティンバランドの仕業だとわかる同曲は見事にチャート1位を獲得し……いや、全米チャートじゃないですよ。“Dangerous”が制したのは全仏チャート。歌うはM・ポコラ、フランスはストラスブール生まれの23歳。ルックスもご覧のとおりです。

「15、16歳の頃からティンバランドの音楽は大好きでよく聴いていたし、最高のプロデューサーだと思ってたからね。彼と会うこと自体が俺にとっては夢みたいな感じだったのに、いっしょに仕事できることになって大興奮したよ。〈夢が叶った!〉って。この“Dangerous”はクレイジーで危険な女の子を歌ったものさ。綺麗なんだけど小悪魔的で、男の理性を失わせるっていう……」。

 彼自身も女性にとってはかなり危険な存在だと思いますが。そんなM君の音楽的なルーツは同じく“Dangerous”という曲も残しているマイケル・ジャクソンだそう。

「6歳の頃に“Bad”を聴いて興奮したし、彼が歌とダンスを同時にこなすのを観て、何て凄い人だ!って思ったことを覚えてるよ。自分のやりたいのはこれだと思った」。

 そして、サッカーと音楽に夢中だった少年時代を経た彼は、TVのオーディション番組をきっかけにリンクアップなるボーイズ・バンドでデビューを果たしています。当時のM君は18歳。〈ボーイズ・バンド発ティンバ行き〉という成功ルートはジャスティン・ティンバーレイクのそれを思い出させますが、奇しくもリンクアップが本国で大人気だった時期は、ジャスティンが“Cry Me A River”で自立したアーティスト像を確立した時期と重なるわけで……その影響もあってか、グループを解散した彼はソロに転身し、国内では引き続き成功を収めることに。で、それに飽き足らなかった彼が作り上げた3枚目のアルバムこそ、インターナショナル・デビュー作でもある今回の『MP3』であります。先述のティンバ&ハノン・レイン組を筆頭に、ライアン・レスリーやJR・ロッテム、ジム・ビーンズといったUSアーバン界の要人を大々的に起用し、全曲で英詞にトライした今作は、彼自身にとっても非常に誇らしい仕上がりなのだそう。

「フランス人だろうが、資金の少ないアーティストだろうが、国際的に有名なプロデューサーといっしょにやれるってことは、あきらかに音楽で結び付いたコラボということだからね。良い曲を作るために全力で仕事をするというティンバランドのスタイルは俺と同じだった。彼のそういうところも大好きなんだ。ライアンとはキャシーの紹介で知り合った。キャシーは昔からの友達で、俺がNYに行った時に俺の音楽を聴かせたら気に入ってくれたんだよ。これからも彼とはいっしょにいろいろやっていくつもりさ」。

 アルバムには時流に沿ったハイブリッドなアーバン・サウンドが並ぶ一方、ヨーロピアンな情趣(安易な形容ですみません)に富んだ繊細なナンバーもバランス良く用意され、この色男のトップスターとしての資質と地力とガッツを窺わせてくれます。「行ったことはないけど、東京のストリートや日本の女の子たちにインスピレーションを受けて作ったんだよ」という“Tokyo Girl”も聴きモノでしょう。

 この後は母国フランスを皮切りに世界各地でライヴを行うという彼。「日本に行けたら、もうひとつの夢が叶うことになるよ」なんてメッセージはスターならではのサーヴィス発言としても、「シャイな俺だから、なおさらステージ上では別の人格になるよ」というデンジャラスなショウはぜひ日本でも体感してみたいものです。

M・ポコラ
85年生まれ、フランスはストラスブール出身のR&Bシンガー。幼い頃からマイケル・ジャクソンやアッシャーに憧れ、ティーン時代にはモデル業と並行してR&Bグループでも活動する。2003年にオーディションTV番組「Popstars」に出演し、3人組ボーイズ・バンドのリンクアップを結成。デビュー・シングルの“Mon Etoile”が全仏チャート1位を記録した後に解散し、翌年に『Matt Pokora』でソロ・デビューを果たす。2006年のセカンド・アルバム『Player』が全仏No.1を記録。今年に入って、ティンバランド制作のシングル“Dangerous”をヨーロッパ諸国で大ヒットさせたのに続き、初の全曲英詞作品となるニュー・アルバム『MP3』(EMI France/EMI Music Japan)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年08月07日 23:00

ソース: 『bounce』 301号(2008/7/25)

文/出嶌 孝次