インタビュー

pe'zmoku


  まずは写真に注目してほしい。ディーヴォさながらのトンガリ帽子に仮面舞踏会を思わせるマスク。別に正体を隠しているわけではないが、〈それまでとは違う自分たち〉でありたいという変身願望を感じ取ることができる。

「そうですね。あまり深くは意識していないんですけど、変身したいというか、これまでの僕らの活動とはまったく別の、あくまで〈新人バンド〉としてやりたいという思いがありましたね」(Ohyama“B.M.W”Wataru)。

 インストゥルメンタル・バンドとヴォーカリストとの合体企画はもはや珍しいことではないが、すでに10年のキャリアを数えるPE'Zが、昨年10月にデビューしたばかりの新人シンガー・ソングライターであるsuzumokuと結成したまったく新しいバンド=pe'zmokuは、そうした流行のワンショット・コラボとはどうやらワケが違うという。今回のデビュー・ミニ・アルバム『ギャロップ』には5曲を収録しているが、そのうちの3曲はOhyamaが楽曲の基本を作り、そしてsuzumo-kuによる歌詞を合わせながら最終的には全員で練って完成させたもの。つまり、曲をイチから共に作り上げていったのだそうだ。

「僕らとしては歌モノのバンドをやりたいという気持ちが前からあって。でも、どうせやるなら曲を作る最初の段階からいっしょにやらなきゃ意味がない。それを、歌い手としてのエネルギーを持ったsuzumokuとならできるかなと思ったんです。彼はギターに対する愛とか情熱もあって、そういう楽器愛みたいなのも僕らと同じ。音楽性は違っても、その姿勢が一致していれば絶対におもしろいことができるんですよ」(Ohyama)。

 実際、曲を仕上げていく過程でsuzu-mokuのアコースティック・ギターと歌、PE'Zの管楽器、あるいは鍵盤とのバランスなどで苦労したところもあったそうだが、結果的にそうした試行錯誤が彼らのクリエイティヴィティーに火を点けた。確かにラテン・ジャズ的なタッチの楽曲をメインにした仕上がりは、6人の指向を素直にブレンドさせたものだろう。だが、それは最初から〈ジャズ+フォーク〉などという短絡的な融合をめざしたものではなく、プレイヤー同士の拮抗したセッションのなかから自然に生まれたものなのだと彼らは話す。

「アコースティック・ギターは空気を響かせる楽器。そこが管楽器や鍵盤とは違うわけで、そういうところがsuzumokuといっしょにやっていておもしろいですね」(ヒイズミマサユ機)。

「初めてライヴを観に行った時、そのエネルギーにとても圧倒されて、自分に何ができるんだろう?ってちょっと不安にもなったんですけど、とりあえずやれるだけやってみようと。でも、実際に合わせてみると、技術とかそういうのはあまり関係なく楽しめるんですよね」(suzumoku)。

「やっぱり歌との絡ませ方には頭を使います。そういう意味ではやっていてすごく刺激的。PE'Zが10年かけてやってきたことを、pe'zmokuでは1年でやりたいなと思ってます(笑)」(Ohyama)。

 それにしても、PE'Zは何かと進化や成長のスピードが速い。リリース作品の量もハンパじゃないし、近年は海外でのライヴ活動にも精力的だ。少しはペースを落とそうとは思っていないのだろうか。

「曲がどんどん出来ちゃうんですよ。あとは僕ら自身、同じことを何度も繰り返すのがイヤで飽きっぽいというのもあります。でも、ライヴの物販コーナーにたくさんの作品が並んでいるのを見ると、売ってくれている人たちは流石に大変だろうなあって思ったりしますね(笑)。実はここ最近、海外でライヴをやると自分たちが日本人であることを日本にいる時以上に自覚するんです。そういう体験から、日本語の曲を作ってみたいな、と思ったのもpe'zmokuを始めた動機のひとつにはありますね」(Ohyama)。

PROFILE

pe'zmoku
Ohyama“B.M.W”Wataru(トランペット)、ヒイズミマサユ機(キーボード)、Kadota“JAW”Kosuke(サックス)、Nirehara Masahiro(ウッド・ベース)、航(ドラムス)から成るPE'Zと、シンガー・ソングライターのsuzumoku(ヴォーカル/ギター)から成る6人組。2007年に結成され、お互いの活動の合間を縫って楽曲制作を開始。同年11月に配信限定で“Nica's Dream”を発表。今年2月に同じく配信限定でリリースした“盲者の旅路”が音楽配信サイトのダウンロード・ジャズ・チャート1位を記録して注目を集める。今夏は〈サマソニ〉〈RISING SUN〉など夏フェスなどへの出演が続々と決定するなか、このたびデビュー・ミニ・アルバム『ギャロップ』(DefSTAR)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年08月14日 00:00

更新: 2008年08月14日 18:01

ソース: 『bounce』 301号(2008/7/25)

文/岡村 詩野