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インタビュー

THE D.E.Y.


  ハッとするほどクールな女のコを先頭に立てたフージーズのカッコ良さと、〈ラヴ&ピース〉に包まれたブラック・アイド・ピーズの友愛精神に則ったトリオが誕生した。その名もデイ。グループ名はメンバーそれぞれのイニシャルから成っている。もともとは男性ラッパーのディヴァインとイェヨのふたりで活動していたそうだが、そこに紅一点シンガーのエランが加わって、グループは本格的にスタートした。

「別に女のコを入れたいって探していたわけじゃないんだ」(ディヴァイン)。

「オーディションとか、そういうのではなかったし、友人を介して〈いっしょにやれば上手くいくんじゃない?〉みたいな紹介をされたのがきっかけだったわ。ディヴァインと私が初めて打ち合わせをしたのは、確か近所の中華レストラン。会って話をしてみたら、ものすごくウマが合ったの」(エラン)。

 その近所とは、エランが生まれ育ったマンハッタンのこと。ディヴァインが生まれ育ったのは、お隣のサウス・ブロンクス。そしてイェヨが生まれ育ったのは遠く離れたプエルトリコ、と出身地はバラバラに散らばっているのだけれど、ひとつ共通しているのが、全員にプエルトリコ系の血が流れていること。R&Bやヒップホップ、ソウルなどをベースしている彼らのサウンドからは、サルサやレゲトン、スペイン語ラップなど、さまざまなラテン・ミュージックの要素があちこちに顔を覗かせる。

「自分たちのように、都会のラテン文化のなかで育った人間による新しい音楽をクリエイトしたいっていう気持ちがあるわ。いろんなジャンルを折衷して、ちょっぴり英語で、ちょっぴりスペイン語で、そして心に響く音楽を作りたい」(エラン)。

「俺たちの音楽は、グループ名にちなんで〈デイリンガル〉って呼びたいな。つまり、デイによるバイリンガルってわけさ」(ディヴァイン)。

 彼らにはもうひとつ共通点が存在する。グループの結成までに、それぞれがすでに相当のキャリアを積んでおり、若くして成功を収めてきたことだ。

「そういう過去のおかげで、お互いに尊重するってことを知ってるよ」(イェヨ)。

「それぞれの違いが、それぞれをユニークな存在にしているわけで、だからこそ逆に自分らしさを痛感するし、それが個性ってやつだよね」(ディヴァイン)。

 いわゆる幼馴染みの友人でスタートしているグループとは違って、もっとプロフェッショナルなレヴェルでの友情が、彼らのなかには存在する。だからこそ、人と人との結び付きにはことさらこだわっているのかも。デビューEP『The D.E.Y. Has Come EP』のジャケは、ブルックリン・ブリッジの前で撮影されていた。

「橋のおかげでラティーノ、ブラック、ホワイトが繋がっている」(イェヨ)。

「もちろん、その他の人種もよ。私たちの音楽を代弁しているわ」(エラン)。

「橋がなければ、俺たち3人も出会ってなかっただろうし、橋がなければ、橋の向こう側で何が起こっているのか、どういう人が住んでいるのかさえ知らないままのはず。俺たちは音楽で人々の間に橋を架けたいんだ」(ディヴァイン)。

 少なくとも彼らのファースト・アルバム『The D.E.Y. Has Come』が、人種とジャンルの架け橋になっているのは明白だ。ティンバランドやJR・ロテム、スターゲイトといった大物プロデューサーたちが関わっているのみならず、チノ・ドレッドライオンやマーク・アンソニー・バンドなど、ラテン系を中心に国際色豊かなミュージシャンが起用されている。そんな彼らの架け橋が日本人のもとにも伸びているのは、アース・ウィンド&ファイアの“Fantasy”を引用したシングル“Give You The World”を聴けば瞭然。万人に訴えかける普遍的なパワーを感じることだろう。

PROFILE

デイ
ディヴァイン(MC)、エラン(ヴォーカル)、イェヨ(MC)から成るヒップホップ・ユニット。ジェルバ・ブエナらと活動してきたニューヨリカンのディヴァインと、プエルトリコ出身でシャンハイ・アサシンズの一員だったイェヨが出会い、そこにNY出身のエランが加わる形で2005年に結成される。すぐにイェヨのスタジオでデモ制作に入り、その音源をきっかけにエピックと契約。ポーラ・ディアンダ“Walk Away(Remember Me)”やショーン・キングストン“There's Nothin(Remix)”などに客演しながらレコーディングを進め、2007年にEP『The D.E.Y. Has Come EP』でデビュー。8月27日にファースト・アルバム『The D.E.Y. Has Come』(Epic/ソニー)をリリースする予定。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年08月28日 20:00

ソース: 『bounce』 302号(2008/8/25)

文/村上 ひさし