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インタビュー

BOO

凄腕のクリエイターとの〈十番勝負〉を繰り広げた久々の新作。新たに見せる、彼の〈あまのじゃく〉ぶりを堪能しよう!


  「(自分にとって)普通のもんを作ろうと思っても、(プロデューサーに)BOOさんってこうでしょ?って寄られたりしてギャップがあったし、ヒップホップの人、ファンクの人だみたいなイメージばっかりになっちゃってすごいフラストレーションが溜まってたんですよ」。

 MUROのバックアップのもとソロ・デビューし、ヒップホップ畑を中心に活躍してきた経歴は、シンガー・BOOのアーティスト・カラーをひとつに染め上げてきた。しかし、「音楽は何でも聴いてて、エレクトロ・クラッシュやディスコ・パンクもカッコイイと思ってた」と話す彼にとって、それはみずからが抱えるジレンマでもあったわけだ。アナログ指向のヒップホップなどから、エレクトロに端を発する近年のクラブ・シーンを賑わす音楽まで、新旧問わずさまざまなサウンドに興味を抱きながらライヴの現場を中心に活動を続けて約4年、彼が久しぶりに発表するニュー・アルバム『excusez-moi』は、まさにそのジレンマを解消すべく、かねてから交流のある多彩な共演陣を迎えたカラフルな内容となった。「ヴォーカルがなくても成立する曲。オジー・オズボーンの感じでやってみました」というcro-magnonとのロッキンな“チョコレート粉砕器NO.9”や、フレンチ・エレクトロの代表レーベル、エド・バンガーを主宰するビジー・Pことペドロ・ウィンターへのオマージュだという☆Taku Takahashi(m-flo)との“FRENCH GIRL!!!!!”をはじめ、「〈ボブ・ドロウみたいに歌えばカッコイイっすよね〉って言ったら(須永)辰緒さんが〈いや、フリッパーズ・ギターで〉って(笑)」というエピソードも然りのSunaga t experienceとのスウィンギンな“愛しのアンドロメダ”があるかと思えば、「ビリー・ジョエルの“Piano Man”みたいな車窓が合う曲にしたい」というところから始まった、メジャー・デビュー以来の付き合いとなる松本良喜との美メロ曲“ザ・ユニバース”、「イアン・デューリーの“Sex & Drug & Rock & Roll”みたいに始まってエンディングはU2みたい」な森雅樹(EGO-WRAPPIN')との“落穂”も収録。さらには原曲の素晴らしさに当初は気乗りがしなかったという吉田美奈子の名曲を、ハウス・ビートでカヴァーしたS.A.(STUDIO APARTMENT)との“恋は流星”や、「レディオヘッドでいえば“Creep”みたいな曲だと思う」というコールドプレイのカヴァーをJazztronikの穏やかなアレンジで送る“YELLOW”などなど、アルバムはDJ HASEBE、THE LOWBROWSらとのヒップホップ的楽曲を交えつつも、本人いわく「いなたさから前衛まで」、みずからの幅広い音楽的背景を映した初の作品集となった。

「(本作は)ある意味十番勝負みたいな感じ。自分自身にとってもすごい勉強になったし、いろんなものが濃厚に散りばめられてる。ファンの人にはあまのじゃくと思われるかもしれないけど〈そんなところもあったのね!〉とドキッとしていただければ(笑)」。

 温和な歌いっぷりにこれまで隠れてきたあまのじゃくぶりを大いに広げて見せた『excusez-moi』をもって、BOOは新たな扉を開いた。行く先が見えないからこそそれがおもしろいのは言わずもがな。

▼『excusez-moi』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年08月28日 21:00

ソース: 『bounce』 302号(2008/8/25)

文/一ノ木 裕之

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