インタビュー

KATY PERRY


  全米チャートをブッチギリで独走中のケイティ・ペリー。とことんポジティヴで、フレッシュで、陽気なヴァイブを振り撒きながら、アメリカ中を、いや世界中をすっかりメロメロにしてしまっている。そんなケイティがついに日本でも『One Of The Boys』でアルバム・デビューを飾る。世界の音楽地図を塗り替えた、そして恋愛観までを捻じ曲げてしまったお騒がせ娘が、日本ではどんなふうに暴れてくれるのか?

 まず、どうしてお騒がせなのかは、大ヒット中のシングル“I Kissed A Girl”の歌詞に耳を傾けてもらいたい。同じタイトルのヒット曲は90年代にもジル・ソビュールが放っているが、あっちが〈レズ願望〉だったのに対して、こっちは〈これがレズ? いいかも!〉みたいな時代の空気をあっけらかんと歌ってしまっているのがいかにも現代的で、かつ先進的だ。

「そうね、私って子供の頃から思ってることを口に出さないではいられないタイプだったわ。みんなが遠慮がちに口をつぐんでいたりしたら、私が代わりにズケズケ言ってしまって、〈え?〉ってみんなが顔を見合わせていたりとか(笑)。“I Kissed A Girl”が私の体験談ってことをいまさら言うのはヤボだけど、でも正直な気持ちだし、ちょっぴりみんなを驚かせてやりたいって性格なのは確かよね。ただ、この曲のおかげで、みんなからキスをせがまれちゃうのは困ったもの。だって全員とキスしていたら……(以下略)」。

 両親は敬虔なクリスチャン。教会の聖歌隊で歌っていたケイティは、実は15歳の時にケイティ・ハドソンという名でクリスチャン・アルバムをリリースしたこともある。「その話は封印よ。だから名前も変えたんだもん(笑)」とのこと。幼い頃は音楽や映画などをかなり厳しく制限(検閲?)されていたそうで、自立してから初めてポップ・カルチャーに触れ、貪欲に吸収していったそうだ。そんな彼女が衝撃を受けた〈こっち側〉の音楽は、クイーンやアラニス・モリセット、ハートやグウェン・ステファニー(ノー・ダウト)などポップなものが多い。アヴリル・ラヴィーンやピンクを手掛けたポップ・ロック職人、ブッチ・ウォーカーやDrルークを起用した今回のアルバムには、そういった彼女のテイストが見事に反映されている。〈言いたいことは言わせてもらう!〉的な態度はピンクともかなり被っているが、本物ロック志向が見当たらないだけに、素直にポップ感覚を楽しませてくれる。とはいえ、今年の夏はパンク小僧が集結する〈ワープト・ツアー〉に参加して驚かせてくれた。

「〈ワープト〉って男の子に次ぐ男の子バンドの連続でしょ、女の子の私が出ていくと、とにかく新鮮みたい。それに、私がやっているのがあくまでもポップ・ミュージックってところでも目立っていたみたい。でも、そこで妥協はしないわ、フフフ!」。

 そんな妥協知らずの彼女をいち早く絶賛したのは、何を隠そうポップ・ミュージック界の女王様。ケイティの先行シングル“Ur So Gay”をマドンナは〈とにかくスッゴく良い曲なの!〉とベタ褒め。〈彼氏はゲイじゃないけど……でも実はゲイじゃないの?〉と疑っている歌詞は、いかにもマドンナが好みそうなユーモアとツイストのセンスに溢れている。

「マドンナにはまだ対面してないけど、会ったら〈サンキュー!〉って言いたいわ。彼女はきっと私のなかに共通項を見い出してくれたんじゃないかしら。ていうか、少なくとも私はものすごく彼女に通じるものを感じているわ。自分の意見を表明することを恐れず、そしてちょっぴりみんなを驚かせてやりたいのよ(笑)。私も彼女みたいに、次々と新しいことに挑戦して、変貌していけたらな、って憧れているわ」。

PROFILE

ケイティ・ペリー
84年生まれ、カリフォルニア州サンタバーバラ出身のシンガー・ソングライター。幼い頃から教会の聖歌隊に参加し、2001年には本名のケイティ・ハドソン名義でクリスチャン・アルバム『Katy Hudson』を発表。その後、ポップ・ミュージックに目覚め、2004年にマトリックスのもとでレコーディングを経験する。2006年、P.O.D.のシングル“Good Bye For Now”にコーラス参加。2007年にキャピトルと契約を結び、10月にEP『Ur Of You』でデビュー。翌年6月にシングル“I Kissed A Girl”をリリース。同曲が全米チャート1位を記録するなど話題を集めるなか、ファースト・アルバム『One Of The Boys』(Capitol/EMI Music Japan)を発表。9月3日にその日本盤がリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年09月11日 00:00

更新: 2008年09月11日 18:07

ソース: 『bounce』 302号(2008/8/25)

文/村上 ひさし