lostage
メンバーの脱退という苦難を乗り越え、新たなスタートを切った彼ら。やりたいことを詰め込んだ新作と共に、次へ向かう〈たからさがし〉が始まる
ヒリヒリするようなロック特有の緊張感と空間を瞬時に生み出すビートでシーンを席巻し続けるlostage。自我と対峙するようなサウンドを追い求めながらも、他者へメッセージを届けることを止めない、素晴らしいバンドだ。
ただ、すべてが順調だったわけではない。今年1月に清水雅也が脱退し、2月に新ギタリストとして中野博教が加入。lostageの25%の血の入れ替えが行われたわけで、バンドとしての危機に直面したと言っていいだろう。
「昨年の秋ぐらいから新作の構想は練っていたんですが、いざ始めようとするタイミングでメンバーの脱退があって。正直、バンドの継続自体が無理かもしれないと思ったぐらい。終末感にも苛まれたし。ただ、新しいメンバーの目処が立ってスタジオに入ってみたら、ちゃんとやっていけるなと感じたんですよね。そこで、自分に対する自信を確認したようなところがありました」(五味岳久、ヴォーカル/ベース:以下同)。
その自信を携え、さまざまなリスナーへヴェクトルが向けられたセカンド・ミニ・アルバム『脳にはビート 眠りには愛を』が完成した。これまでの軸はブレることなく、ストイックなロックからよりポップに振れた曲まで、さらに開かれたサウンドを展開している、まさに盤石の内容だ。壮大なスケールと包容力に満ち溢れた“母乳”、魂が引きずられるようなドライヴ感がたまらない“DIG”、ドキッとするほど鮮やかなメロディーに彩られた“PURE HONEY”など、柔和なポップさが随所に顔を出した作品となっている。
「どうせだったら、何となく決めていた自分たちの枠を取っ払って、やりたいことをさらに突き詰めようと。そこは開き直りに近いかもしれないですね(笑)」。
また、今作でさらに際立っているのが五味の綴るリリックだ。ニヒリズムに足を踏み入れながらも、ロマンティシズムを大切に抱えていることが如実にわかる彼の言葉は、〈愛〉や〈嘘〉といった言葉をキーワードにしながら、独自の世界観を構築している。
「本からインスパイアされることが多いんですけど、なかでも町田康や中原昌也が好きですね。ワケがわからないのがイイ (笑)。ただ奇を衒うという意味じゃなくて、もっとおもしろくできるのかなと。普遍的なことを歌ってるわけだから、よりこだわっていきたいですね」。
そして、10月からは〈ロストエイジのたからさがしツアー〉が始まる。「これまでになく開いた作品だから、期待と不安が入り交じっている」と五味は口にするが、HOLSTEINや8ottoといった屈強なバンドたちとライヴを重ね、多くのオーディエンスと感情の交流をすることによって、そんな懸念は払拭されるに違いない。
「今回のツアーが何かのキッカケになればいいなと思っているんです。そういう意味でも〈たからさがし〉なんですよね」。
▼lostageの作品を紹介。