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インタビュー

JENNIFER HUDSON

逆境から見事に勝ち上がるという、あの華々しいシンデレラ・ストーリーもまだ序章に過ぎなかった──本当に掴みたかった夢を現実のものにするため、ドリームガールがふたたびスポットライトの下で輝きを放つ!!

みんな先入観を抱いていた


  新人にして貫禄満々。〈ディーヴァ〉という言葉を何の衒いもなく冠することができる本格派女性ヴォーカリストが、久々に現れた気がする。もちろんジェニファー・ハドソンのことだ。彼女の名前はまず4年前に「アメリカン・アイドル」第3シーズンへの参加を通じて世に広まり、この時は7位の成績に終わるのだが、その後映画「ドリームガールズ」(2006年)で準主役のエフィー役に抜擢。約30の映画賞を総なめにして一躍時の人になったことは、繰り返すまでもないだろう。つまり、類い希な実力もスター性もすでに証明済み。実は映画公開前にレーベル契約も済ませており、あとはアルバムを完成させるだけでよかったのだが、「ミュージシャン業と女優業の掛け持ちなんてまったく想定外だったから、すっかり予定が狂っちゃったわ」と当人は屈託なく笑う。結局4本の映画の撮影と並行してレコーディングを進め、ようやく自身の名を掲げたファースト・アルバム『Jennifer Hudson』が完成した。順序は逆になったものの、歌を生業にすることを幼い頃から夢見てきた人だけに、意気込みはハンパじゃない。

「もちろんプレッシャーもあったわ。評価されたのは演技なんだから歌でナーヴァスになる必要はないんだけど、どの映画よりもプレッシャーは大きかった。女優としての成功が人々の期待を高め、多くを求められていることをひしひし感じていたの」。

 そんな彼女にとっていちばんの懸案事項は、「映画の役柄とは違うジェニファー・ハドソンというひとりの人間像」を伝えることだったそう。

「だからこそタイトルも自分の名前なの。エフィーでも〈「アメリカン・アイドル」で歌った女の子〉でもない、いまの私のパーソナリティーを明確に打ち出したかった。そのために、例えば生意気な面、傷付きやすい面、スピリチュアルな部分などなど、私のなかにあるいろんな側面を楽曲に反映させたのよ」。

 従って曲ごとにスタイルやヴァイブはさまざまで、映画の印象からバラード集を思い描いていたなら、予想はあっさり裏切られる。もちろん大御所ダイアン・ウォーレンが綴った王道バラードもあるし、あのエフィーのテーマ曲“And I'm Telling You I'm Not Going”も改めて収録されているのだが(「だって私のキャリアの出発点であって、最初のヒット曲だし、単純に素晴らしい曲でしょ?」)、歌い上げることには終始していない。ニーヨ&スターゲイトのチームはクールでポップな先行シングル“Spotlight”を、ティンバランドはオハコのバウンシーな“Pocketbook”を、ミッシー・エリオットは古典的なソウルの匂いがする“I'm His Only Woman”を提供するといった具合に、曲を聴き進めるごとに新たな表情を披露。他にもロビン・シックやブライアン・ケネディを含む売れっ子サウンドメイカーたちとのコラボを振り返って、彼女は次のように語る。

「すでに親しい人なら大丈夫だけど、やっぱり私を知ってもらうことから作業は始まったわ。みんな会う前から先入観を抱いていたから。ティンバランドがいい例で、初めて会った時に曲を用意してきてくれたんだけど、私と話したら印象が変わったそうで、翌日まったく新しい曲を作ってきた。それが“Pocketbook”なのよ」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年11月13日 06:00

更新: 2008年11月13日 18:04

ソース: 『bounce』 304号(2008/10/25)

文/新谷 洋子、轟 ひろみ