the telephones
新世代ジャパニーズ・ロックの〈台風の目〉となるか? この夏、各地のロック・フェスで大いに話題を集めた〈踊れるロック〉の最前線、the telephones。ミラーボール輝くディスコの昂揚感はもちろん、ニューウェイヴからエレクトロまで、古今東西のロックを呑み込みながら、それをアグレッシヴかつポップに爆発させる彼らのサウンドは、確実に新しい〈何か〉を予感させるキラメキとエネルギーを放っている。
「もともとノリで組んだバンドだったので、最初は何も考えてなかったんですけどね(笑)。でも、俺を誘った張本人がバンドを抜けちゃって、残ったメンバーでどういう音楽をやるかっていうところにけっこう試行錯誤を繰り返して。ロックって、70年代とか80年代とか時代ごとに分けられるじゃないですか? だから自分たちがやるとしたら、やっぱり2000年代の音楽をやらなきゃいけないなとは思っていて。で、2000年代っていうと、世界的にはニューウェイヴ・リヴァイヴァルだったりガレージ・リヴァイヴァルだったりがあるから、その空気は感じさせつつも、模倣ではないオリジナルなもの、しかもよりポピュラリティーのあるものをやろうっていう意識は凄いあったんですよね」(石毛輝:以下同)。
今年1月にリリースしたファースト・フル・アルバム『JAPAN』以降、精力的にライヴ活動を展開するなかで、その方向性に自信と確信を深めていったという彼らが現在の勢いそのままに生み出した一枚。それが今回のニュー・ミニ・アルバム『Love & DISCO E.P.』である。
「『JAPAN』は凄く凝った作りだったというか、打ち込みを入れてみたり、いろいろ実験的なこともやってみた結果、ちょっと頭でっかちになりすぎちゃったかなっていう反省もあったんですよね。『JAPAN』を出した時はホント手探りだったから、ちょっと自信がなかったところもあったし。でも今回は夏フェスが終わった後にレコーディングに入れたっていうのもあって――やっぱり〈サマソニ〉とかで普通のお客さんはもちろん、アーティストも含めて海外の人にもけっこう評価されて、ある程度自信がついたんですよね。だから今回は余計なことを気にせずに、もっと自分自身のルーツに遡って、いま鳴らすべきロックをちゃんと鳴らそうと思って作った感じがありますね。なので、今回は打ち込みを一切使ってないし、1曲目から8ビートだし、ギター・ソロも凄い入ってたりして、普通にガツンと鳴らせばいいじゃないかっていうシンプルな考えで作っていって。その結果、これまででいちばん衝動的な一枚になったような気がします」。
〈踊るための〉ではなく、これまでみずからを突き動かしてきたロック・ミュージックの断片を、1曲のなかに過剰なほど盛り込んでいったら、結果的に〈踊れる〉――否、もはや〈踊るしかない〉音楽が出来上がってしまったとでもいうような内容。そのなかでもとりわけ印象的だったのは、タイトル曲に顕著な彼らの根本にあるセンティメント――ロマンティックな〈泣き〉の側面が、はっきりと浮かび上がっていることであった。
「ダンス・ミュージックって、もともと悲しみがきっかけで生まれたものじゃないですか? 憂いの音楽というか。でも、それを楽しくやっちゃうことが現代の俺らのロックだなって思うんですよ。でもアッパーなだけで終わるのも嫌だったし――僕自身、基本的に明るい人間ではないというのもあって(笑)。やっぱり、説得力のある音楽っていうものをやりたいんですよね。もちろんライヴはただ楽しいだけでもいいと思うんですけど、そういう憂いの感覚をちゃんと日常にも持って帰ってほしいっていうか……そういう願いは、凄い強くあります」。
PROFILE
the telephones
石毛輝(ヴォーカル/ギター/シンセサイザー)、長島涼平(ベース/コーラス)、岡本伸明(シンセサイザー/カウベル/コーラス)、松本誠治(ドラムス)から成る4人組。2005年に埼玉は北浦和で結成、関東を中心に精力的なライヴ活動を開始。2007年にファースト・ミニ・アルバム『we are the handcraps E.P.』をリリース。ライヴハウス、クラブを問わず動員を増やす。2008年1月にはファースト・アルバム『JAPAN』を発表して話題となり、〈ARABAKI ROCK FES〉や〈サマソニ〉〈ROCK IN JAPAN〉〈SWEET LOVE SHOWER〉など多数のフェスに参加し、注目を集める。このたびセカンド・ミニ・アルバム『Love & DISCO E.P.』(DAIZAWA/UKプロジェクト)をリリースしたばかり。