フラワーカンパニーズ
百戦錬磨のヴェテランがパワーアップしてメジャーに復帰! 〈大人になるってどういうこと?〉と問う39歳のロックが、心に沁みまくる!
毎年100本以上ものライヴで日本中を飛び回っているバンドを捕まえて、メジャーだインディーだと言うのはナンセンスな気もする。が、〈フラカン、7年8か月ぶりにメジャー復帰〉という事実を、いまは素直に喜びたい。89年の結成から、熱く激しく切なく清い、素晴らしいロックを不動のメンバーで奏でられてきたフラワーカンパニーズの音楽が、ふたたび多くの人の耳に届く大きなチャンスがやってきた。
「良い曲を書いて良いライヴをすることはできても、それ以上は自分たちだけでは難しいから。インディーでやれることはやり尽くしたし、いまのレーベルの人と話した時に、これは絶対に大丈夫だと思ったので〈お願いします〉と」(グレートマエカワ、ベース)。
メジャー復帰第1弾となるニュー・アルバム『たましいによろしく』は、鈴木圭介(ヴォーカル)がソロで行っていた弾き語りライヴ用の楽曲をきっかけに、〈歌と歌詞ありき〉で作られたシンプルでアコースティックな質感のロックに占められている。長いキャリアと高いスキルを持つバンドが〈これがいちばん良いやり方〉と自負する、きわめて自然体のバンド・グルーヴに貫かれた自信曲ばかりだ。
「圭介が弾き語りで作る曲の雰囲気が良ければ、アレンジを加えることなくそのままやろうというのがあったから。バランスも特に考えず、良い曲だけを入れたらこうなったんです」(マエカワ)。
歌詞のテーマも全曲で一貫している。一言で言えば〈大人になるってどういうことだろう?〉で、そんなこといつまで歌ってんだよ!と言われかねない極めてナイーヴなテーマだが、現在39歳のフラカンが歌う〈大人になるってどういうことだろう?〉には圧倒的なリアリティーがある。リード曲“この胸の中だけ”の一節、〈今年で39だろ? 背中曲がってるぜおっさん!〉という自虐的な言葉を愛で包み込んだ表現に、胸を揺さぶられる同世代のリスナーは多いはずだ。
「同年代に〈わかるよね〉と言ってもらえるのは予想していたけど、10代の若い子も〈イイ〉と言ってくれるんです。どの世代にもある永遠のテーマなんですよね」(マエカワ)。
「60になってこの曲を聴いたら、〈おまえ、まだ39だろ!〉と思うんでしょうね。だから全然リアリティーがあるんです。大人という基準がまだわからないし、子供のままだとも思ってない。あの頃が良かったとは思わないけど、いまのほうがいいか?というと、それも……どっちなんだろうな?」(鈴木圭介)。
いわば結論のない途中経過の人生論だが、もちろん結論など出やしない。“この胸の中だけ”には、〈30年前の僕〉と現在の自分とが対話をするファンタスティックなシーンがあるが、その部分を聴くたびに胸にこみ上げる熱い思いは、きっと10代にも60代にも共感できる普遍的なものだ。
「もし小学生の頃の自分と会ったら、その自分と会話が盛り上がっていたいと思ったんですよ。〈おまえ、怪獣の名前も忘れちゃったの?〉と言われることに危機感を覚えて、とりあえず〈ウルトラマン〉を最近全部観直しました(笑)。あと〈金八先生〉も。昔観て鳥肌が立ったシーンを、いま観て何とも思わなかったらガッカリだと思ったんですけど、やっぱり同じところで鳥肌立ったんで、まだ大丈夫だなと。曲とはまったく関係ないですけど(笑)」(鈴木)。
冗談に包まれてはいるが、表現者として「大事なことを思い出すための語り部でありたい」という圭介の言葉には何とも言えない凄みがある。フラカンのロックが瑞々しさを失わない理由は、きっとそこにあるのだと思う。
▼フラワーカンパニーズが参加したコンピを紹介。
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2008年11月27日 02:00
更新: 2008年11月27日 17:05
ソース: 『bounce』 305号(2008/11/25)
文/宮本 英夫