嘘つきバービー
妄想に妄想を重ね、爆発したヤツらのイマジネーション。それがカオスな音と共に放たれたら……気持ち悪すぎておもしろいって!
バービーとは、メンバーの岩下優介が飼っていた犬=バビブベの愛称。バービーにベースの上を走り回らせる、という遊びを思いつき、現在のメンバーとバービーとで、〈バビブベ以外人間〉というバンドを結成した時点から、彼らの歴史は始まる。
「そのバンドはすごく楽しくて、〈もっとでっかいライヴハウスで演る時は、バービーの衣装も作ってやらんといかんね〉〈ワンワン!〉みたいな、キラキラした青春という感じだったんですが、ある日バービーが亡くなって。すぐにメンバーが集まったんですが、みんなの目に星がないというかね。悲しみの表情のなかに気色悪さがあって。いまのバンド名は、夢を語り合って実現できなかった友達に敬意と憎しみを込めています。僕らは気持ち悪いと言われることがありますが、もしかしたらライヴ中はバビブベを思い出してあの星のない目になってるのかも」(岩下優介、ベース/ヴォーカル:以下同)。
――と、バンド名の由来からして一筋縄ではいかない長崎発の3人組、嘘つきバービー。彼らのファースト・フル・アルバム『問題のセカンド』は、岩下による奇想天外な発言に輪をかけてとんでもないシロモノだ。
「普段生活しとって目についたものに、実行できないイタズラを加えた妄想をすることがよくあります。“虫こない”は公園に行った時、そこにいたオッサンの後ろ姿を見て、〈ここにおる鳩、全部おっさんが吐いたものやとしたらどんな裏があるやろう〉とかで作ったものです。オチがつくことを常に意識してますから、落語や童話なんかからの影響があるかもしれません」。
奇っ怪なシチュエーションがマンガ的にデフォルメされて展開する歌詞は実写化不能なインパクト。イマジネーションの余地がないともうホラーの領域だが、そのなかに周到に紛れ込ませてあるペーソスが、彼らの詞世界を特異なものにしている。
「今回の作品で意識したのは、〈可笑しさのなかに切なさがある〉。マンガに例えると〈バカボン夕日を見に行く〉みたいな。このタイトルにするだけで、おっさんの〈おでかけですかー? レレレのレー〉すら切なく感じる。そういう世界観が自分のなかでブームだったというのもあり、今回はちょっと切ないテイストが入ったものが多くなってます」。
攻撃性と脱力感が絶妙に拮抗するギター・リフを軸に、パンク、ガレージ、ハードコアから祭囃子までを呑み込んでスリリングにドライヴする本作。どこか関西地下シーンにも通じる猥雑さと不穏さを孕む爆裂妄想サイケ・ロックのキモは、果たしてどこにあるのだろう?
「きちんと作り上げた世界観に対して、何かしらの裏切りを入れることですね。ただ、小説とか読んどって〈わ~、まさかのコイツが裏切りやがった!〉みたいなんはあんまり好きじゃなくて、〈だ~、こいつ裏切るかもしれん。いや、わからん。が~、裏切りやがった!〉みたいにドキドキするようなものを作り続けたいです」。
▼嘘つきバービーのミニ・アルバムを紹介。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2008年12月04日 07:00
更新: 2008年12月04日 18:29
ソース: 『bounce』 305号(2008/11/25)
文/土田 真弓