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インタビュー

HIGH FIVE

ハード・バップの新世代を牽引する最強クィンテットがお目見え! ジャズのことはわからなくても、このヤバい熱さは絶対に伝わるぜ!!


  現在のヨーロッパ・ジャズ界で名実共にNo.1と呼ぶに相応しいバンドがイタリアのハイ・ファイヴ。2002年に『Jazz For More』でデビュー、2004年に『Jazz Desire』を発表してメインストリームでも高い評価を得ると共に、ニコラ・コンテやマリオ・ビオンディらクラブ・ジャズ系アーティストの作品でもバックを務めるなど、幅広い活動で知られる。メンバーのファブリッツィオ・ボッソ(トランペット/フリューゲルホーン)、ダニエレ・スカナピエコ(テナー・サックス)、ルカ・マヌッツァ(ピアノ)、ピエトロ・チャンカグリーニ(ダブル・ベース)、ロレンツォ・ツゥッチ(ドラムス)は、それぞれ90年代より自身のリーダー作や有名アーティストとのセッションでイタリアの若手実力派というポジションを獲得しており、その結集がハイ・ファイヴなのだ。そんな彼らがこのたび名門ブルー・ノートに移籍し、ニュー・アルバム『Five For Fun』を発表した。そのタイトル曲はファンキーなジャズ・ロックで、いままでの洗練された演奏に力強さも加えた〈新生ハイ・ファイヴ〉を印象付ける。

「ドイツでのサウンド・チェック中に、文字どおり〈楽しむため〉に作った曲だけど、これまでとちょっと毛色が異なっていて、よりファンキーになっているかもしれない。こういったストレートで強い曲は、ソロでというよりやっぱりバンドでやりたいよね」と、バンドのフロントマン的存在であるファブリッツィオ・ボッソ(発言:以下同)は語る。現在、人気を博するヨーロピアン・ジャズだが、一般的にそれは繊細さとか洗練といったイメージで捉えられているように思う。しかし、ニコラ・コンテが新作『Rituals』で黒いフィーリングを打ち出し、ファイヴ・コーナーズ・クインテットはファンキーでソウルフルなテイストの新曲を発表するなど、アーティスト自体はどちらかというとUS的なジャズを志向している。そもそもヨーロッパのジャズとはUSのジャズへの憧れから始まったもので、ルーツを辿ればブルー・ノートをはじめとしたUSのモダン・ジャズとなるのだろう。『Five For Fun』に収められたいくつかのカヴァー曲もそうした視点から選ばれているようだ。

「シダー・ウォルトンの“Ojos De Rojo”、マッコイ・タイナーの“Inception”、ジョー・ヘンダーソンの“A Shade Of Jade”とやってるけど、どれも大好きな曲さ。これらが『Five For Fun』にぴったりだという確信があったし、アルバムを完成させるのに求めていた曲そのものだったと言えるかもしれない」。

 爽快なハード・バップ、重厚なモーダル・ジャズ、セクシーなボッサ・ジャズ、美しいバラードと、60年代ブルー・ノートの音に現代のクリアでダイナミックなサウンドの質感を注入した今作は、2008年におけるモダン・ジャズ・ルネッサンスというべきアルバムに仕上がった。

「いままでのアルバムもその時点では満足のいくものだったけど、今回はより力強く成熟したアルバムが作りたかったんだ。お互いにもうずいぶん長い付き合いになるし、より〈成長した〉作品を作りたいと感じていたからね。僕らの演奏のやり方自体はずっと同じだけど、ただ伝えたいものというか、音楽に対するヴィジョンがより深くなったと思うよ」。

▼『Five For Fun』に収録されたカヴァーの原曲を収めた作品。


シダー・ウォルトンの77年作『Eastern Rebellion 2』(Timeless)


ジョー・ヘンダーソンの66年作『Made For Joe』(Blue Note)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年12月18日 22:00

ソース: 『bounce』 305号(2008/11/25)

文/小川 充