インタビュー

Jazzida Grande

他のクラブ系クリエイターとは一味違うスタンスでオリジナリティーを発揮する彼が、趣を異にしたニュー・アルバムを2枚同時に発表!


  もはや〈ブーム〉という言葉では片付けられないほど、着実な人気を獲得している国産ハウス。この隆盛っぷりは、センスとスキルを兼ね備えたアーティストが見事にズラリと揃っているという至極真っ当な理由によってもたらされているのだろう。イケガミキヨシ=JAZZIDA GRANDEも、そんな充実したシーンを支える才人の一人。洒脱なソングライティングを武器にリスナーを魅了してきた彼が、このたび『Petits Morceaux L』と『Petits Morceaux R』という2枚のアルバムを同時に発表した。2枚に分けた理由を彼はこう説明する。

「制作過程で、アコースティック・サウンドを強調したベクトルと、エレクトロ・サウンドを強調したベクトルとが混在していたんですが、この2つを別々に分離させたほうが、それぞれの自由度がより高くなるんじゃないかと思って」。

 ピアノの旋律が印象深い“Heat”などアコースティック系トラック中心の〈L盤〉と、フレンチ・タッチ風の“48 Ho-urs Vanity”をはじめとしたエレクトロ系トラックが並ぶ〈R盤〉。いずれもキャッチーなヴォーカル曲と多彩かつエキセントリックな音が詰め込まれたインストものとを交互に配しているのが興味深い。

「肉声はどんな楽器よりも訴求効果が高いので、インスト曲では構成やサンプリング・ネタの部分で凝ってみるなど肉声がない〈不足分〉を何かで補おうと考えてますね」。

 このような作業を通して彼一流のポップセンスがコンセプチュアルな2枚を華々しく彩る。そこで気になったのは、イケガミのメロディー/ハーモニーの妙味を活かした作風が、いわゆる〈クラブ系トラックメイカー〉のそれとは一線を画しているように思える点だ。

「他のクラブ系アーティストとスタンスが違うことは自負しています。それはおそらく、僕がDJ出身ではなくジャズのプレイヤー出身だということが大きいんじゃないかと。クラブで流せる曲を作りたいというよりは、聴き応えのある曲を作りたいという願望のほうが強かったりしますね」。

 そのオリジナルなスタンスが奏功し、リミックスやプロデュースも数多く手掛ける一方で、TVCMや映画音楽など、〈クラブ外〉の分野でも才能を発揮している。しかし、自身名義の作品においてはダンス・ミュージックを追求することを本分と見定めているとか。

「ダンスの文脈に縛られない音楽への志向はもちろんありますが、やっぱりハウスやテクノはスリリングで魅力的ですから、そのフィールドで挑戦できるうちは、とことん挑戦していきたいですね」。

▼JAZZIDA GRANDEの作品を一部紹介。

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掲載: 2009年01月08日 20:00

ソース: 『bounce』 306号(2008/12/25)

文/澤田 大輔