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インタビュー

KEITH


 「いまのUKロック? 最悪だよ。成功しているバンドはどれもこれもアークティック・モンキーズのマネばかり。新しいサウンドを開拓しようなんてヤツらはほとんどいないね。ロンドン出身だったらクラッシュとリバティーンズとジャムあたりを聴いて、それだけでもうバンドを始めちゃう……みたいな。この3つにプラスして、例えばニーナ・シモンでも聴いてたら、もうちょっとおもしろい音になるかもしれないのにね(笑)」。

 そう言って首をすくめながらケーキを頬張るブロンドの男、オリ・ベイストン。マンチェスターから登場した4人組、キースのフロントマンだ。シミアン・モバイル・ディスコのジェイムズ・フォードをプロデューサーに迎えたファースト・アルバム『Red Thread』で一躍注目を集めた彼らは、確かに多彩な音楽性を身に纏っている。サイケデリック・ロック、アフロビート、ジャズ、エレクトロニカ……それをスタイリッシュにブレンドしたのが前作ならば、セカンド・アルバム『Vice And Virtue』はこれまで以上にバンド・サウンドを重視。より直感的で野蛮な音に仕上がっている。

「今回は全曲一発録りなんだ。僕らにはライヴ・バンドとしての自信もあるし、そこがやっぱり自分たちの良さだと思っているからね。例えば“Lullaby”とか“Up In The Clouds”みたいに、ちょうど真ん中の間奏部分にジャムっぽいブレイクダウンがあるんだけど、そういったセッションからグルーヴを生み出すのも僕らのスタイルだと思ってる」。

 そもそもキースは、同じ大学で音楽を学んでいた10数名の仲間たちでセッションを重ねていくうちに、現在の4人にメンバーが固まっていったというグループ。それだけに、ジャム・セッションはバンドの重要なエッセンスなのだ。

「ジャムの良い点は、最初は何もアイデアがないところから始まって、演奏をずっと続けていくうちに、だんだんひとつの結論=自分たちがいちばんカッコイイと思えるものに辿り着くことだ。そのプロセスがスリリングなのさ」。

 そうやって生まれる音の感触がクラウト・ロックの伝説、カンに似ていると指摘すると、オリはニヤッと笑って私物のCDを取り出した。それはまさしくカンの代表作『Tago Mago』。あらま。

「僕らが曲を作る方法のひとつに、10分ぐらいずっとビートを反復させて、その上でどんどんセッションしていくやり方があるんだ。そのなかからおもしろいリフや展開を見つけてきて、それを最終的にキュッとコンパクトにまとめるのさ。そういうアプローチは確かにカンやノイ!あたりのクラウト・ロックに近いかもね」。

 さらにそうした生々しいグルーヴをエディット。スタジオ・ワークを通じてケミストリーを生み出したのが、プロデューサーのダン・キャリーだ。「冒頭曲“Can't See The Face”の最後2分半くらいのジャム・パートは、ダンに好き勝手にいじってもらったものだよ。彼にはメンバーの一人みたいな感じで参加してもらったんだ」とオリは振り返るが、今回のプロデュースはダンからの申し出らしく、バンドとの信頼関係は厚いようだ。

 とにかく、やりたいことなら山ほどある──そんな勢いに満ちたキースが、UKロックの最前線に立つ日はそう遠くないはず。というか、いまがその時!

「常に変化することを躊躇わずに、新しいスタイル、新しいサウンドを作っていこうと思ってる。必要以上にオルタナティヴになったり、ポップである必要はないんだけど、いつだってみんなを驚かせたいんだ。今回のアルバムに続いて、年明け早々には教会でレコーディングしたミニ・アルバムもリリースするつもりだよ。また、それに合わせて来日もする予定だから楽しみにしててほしいな」。

PROFILE

キース
オリ・ベイストン(ヴォーカル/キーボード)、マーク・ニコルス(ギター)、ジョン・ウェディントン(ベース)、ジョニー・ウィン・ボルト・ルイス(ドラムス)から成る4人組。2004年頃、大学のクラスメイトが集まってマンチェスターで結成。2005年5月にデビューEP『Hold That Gun EP』をリリース。翌年5月にはファースト・アルバム『Red Thread』を発表。その年の〈サマソニ〉で初の来日公演を行う。また、同時期にリリー・アレン“Take What You Take”のバック演奏を担当するほか、サンシャイン・アンダーグラウンドらとツアーを回るなどして知名度を上げていく。このたびセカンド・アルバム『Red Thread』(Lucky Number/BEAT)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年01月22日 22:00

ソース: 『bounce』 306号(2008/12/25)

文/村尾 泰郎