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インタビュー

MASS OF THE FERMENTING DREGS(3)

――では、中尾さんも完成形はレコーディングのときに初めて聴いたんですか?

中尾 まあね。でも、そんな心配はしてなかったから。

石本 憲ちゃん、いっつもそうやって言う(笑)。すっごい追い詰められたんですよ、この曲。「きゃぁ~!」ってなったもん(笑)。

宮本 なんか、柔道部の打ち込みみたいに、その曲をスタジオで延々やったよね? もうとりあえず今日しかスタジオがない、数日すればツアーに出るみたいな感じやって、憲ちゃんもギャーギャー言ってて(笑)。ギャーギャーって言っても「コラァ!!」っていうんじゃなくて、みんなテンションがおかしくなってた感じ。

中尾 ああ、思い出して来た(笑)。

石本 憲ちゃん間違ってへんのに、私が「間違えたー!!」って言ったら憲ちゃんも「間違えたー!!」って叫んでて(笑)。

中尾 そうだ。で、ホントに時間がなくて、どういう曲か掴むために俺、この曲で踊ってみようと思って(全員笑)。

宮本 そう(笑)。すごい踊っててジャンプとかしてて、私に「なっちゃん、そこはジャンプやろ」みたいなこと言ってきて「いやいやいや」って答えたのを覚えてる(笑)。その曲はホンマ、ギリギリまでやってました。

――踊って、曲を掴めたわけですね?

中尾 掴めました(大真面目)。

全員 (笑)。

宮本 基本的に、その曲の感じとかは、うちらも体で覚えるからね。1曲目は、ライヴでやったことがないのに録ったっていう。

――じゃあ、ほかの曲は先にライヴで演奏してみていた?

宮本 そうですね。ライヴでやるってすごい大事で。

石本 グルーヴみたいなもんを掴むっていうか、自分らの体にその曲を馴染ませるっていうか。ライヴやると、アレンジとか変わってきたり、単純に弾き方もちょっと変わったりとか。

宮本 歌も目の前にお客さんがいるのといないのとではまったく違うから、ライヴで何回もやって。1曲目はそれがないまま録ったけど、思ったより出来ててビックリしたもんね? ミックス終わって聴いたときに、みんな「いい! これリード曲でしょ」ってなった。

――中尾さんは、今回の作品で彼女たちのどういうところを引き出せたと思います?

中尾 ぶっちゃけて言うと、スタジオで出てくるものに対して、俺が気に入ったものをいっぱい引き出していったっていう(笑)。

宮本 (笑)。でも、憲ちゃんが言ったことに対して「それないですわ」っていうことがなかったから。

――おふたりとしては、前作からここが変わったんじゃないかなって思うところはありますか?

宮本 それぞれの音を聴く力みたいなのはついたと思いますね。各自、何が出来るのかっていうのを考えられるようになりつつあるみたいな。

石本 何やろな? 自分の限界をどこまで広げられるか、みたいなところ? 悪く言えばプレッシャーのような部分もあったし、がんばらなあかんなってすごい思ったりもしたし。ちょっと前よりも逞しくなったような気はせんでもない(笑)。まだ弱気やけど(笑)。なんか、音楽的にどうこうよりさ、気持ちじゃない?

宮本 うん。特にこういう音楽がやりたいっていうのもホントにないから、ずっと。

石本 いまやれることを、いまやりたいことをやる、みたいなのは前作と変わらへんな。

宮本 うん。マスドレで音楽をやっていく限り、それは絶対変わらないと思うんですけど。私だったらそのときに言いたいこと、そのときに書けること、その瞬間瞬間で物事を捉えてやっていくっていう形でしか、たぶん出来ないんだと思う。

――では、今回の作品で言いたかったことは?

宮本 「みんなにこういうことが言いたいです」っていうことはなくて、自分に日々起こっとることとか、それで自分がどう思ったかとかを、「あるよね、こういう感じ」ぐらいのニュアンスで書いてる。

――では、アルバムを象徴するタイトルとして『ワールドイズユアーズ』という言葉を選んだのは何故ですか?

宮本 最初は1曲目のタイトルがアルバムのタイトルになるはずだったんですよね。いまのバンドの状態にもリンクするし、いいんじゃないかって言ってて。だけど最後の曲のタイトルが“ワールドイズユアーズ”に決まったときに、周りから「ちょっとそれ(アルバムのタイトルに)いいんじゃない?」って言われて、よく考えたらこっちの方がおっきい意味やなって思ったから……ちえぽんとかも、思ってたこととリンクするみたいなこと言ってたよね?

――その、思っていたことというのは?

石本 ドラムの吉野さんの世界があって、なっちゃんの世界があって、自分の世界があって、それが全部出てマスドレっていうバンドの曲になって、それをライヴとか音源とかでいろんな人が聴いて、そのいろんな人もそれぞれに自分の世界があって、みたいな。世界はひとつやけど、そのなかに無数の世界がある。自分の世界観みたいなものを、みんなに大事にしてもらいたいな、って。その人たちにマスドレの曲がどう映るかはわからんけど、いっぱい響けばいいなと思う。なんか、無数な人に向けてる感じというか。

――ちなみに、宮本さんが元々“ワールドイズユアーズ”という曲のタイトルに込めていた意味というのは?

宮本 「大丈夫やで」っていう意味で。人それぞれに世界があるじゃないですか。だから、「世界は自分のものやねんから、大丈夫やで」って。みんな、わかりますかね?

――わかると思いますよ。「世界は君のものだよ」っていうことはつまり、「自由に生きていいんだよ」ってことですよね?

石本 強制的じゃない感じがいい。タイトルに決まったときも、聴く人の自由がすごい大事にされてていいなあと思って。

――大らかで、ある意味ではすべてを肯定してる。

宮本 ああ、うんうん。

――そういう大らかな言葉が、オープンなサウンドとすごく合ってるなあと思いました。

宮本 よかった。ふふ(笑)。

――中尾さんは、いかがですか?

中尾 うん、僕も同じような印象でしたね。(タイトルが決まったという)メールが届いて、「お、いいじゃん!」って即座に思いましたから。そういう話をね、してたような気がするんだよな。1年とか2年でバンドを取り巻く環境が変わって、いろんな人が関わるようになって、お客さんの数も増えて。そういうことすべてを象徴しているような気がしてますね。

▼MASS OF THE FERMENTING DREGSの作品

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2009年01月22日 18:00

更新: 2009年01月26日 17:05

文/土田 真弓