インタビュー

CradleとCradle Orchestra、その美しき軌跡

 数枚のEPやもはや入手困難な人気ミックスCD『Sound Contact #2』でジワジワと評判を高めたCradleが初のオリジナル・アルバム『Attitude』をリリースしたのは2006年初夏のこと。同時期のコンピ『Blue Chronicle』にも名を連ねたDJ RYOWやSHIN-SKIと並んで、海外のMC勢と台頭に渡り合うNujabes以降の新世代ビートメイカーとして注目を集めていくことになる。『Attitude』以降のCradleは、DJ ChikaがInherit名義でソロ作『Up The River』を発表したり、インサイスらのリミックスを手掛けたりする一方、瀬戸智樹が馴染みの鍵盤奏者であるHiroki Mizukamiのアルバム『keep aLive』(Chikaも参加)をプロデュースするなど、個々の活動が目立ったかのように思えた。が、次なる試みとしてのCradle Orchestraはすでに始動していたのだ。グッド・ピープル“About You”のリミキサーとして登場したこの楽団は、しばしの空白を経てセイントの“Can't Relate”をリミックス。この両曲を目玉とした『IN YA MELLOW TONE』は、2008年屈指のヒット・コンピとなり、必然的にCradle Orchestraへの待望感を大いに高める前夜祭となった。メロディックなヒップホップ作品が半ば飽和状態となるなか、その上を行く彼らのチャレンジが功を奏したということだろう。続いて送り出したアンティドーツの“Got Rhymes(Cradle Orchestra Conflict Remix)”も、すかさず『IN YA MELLOW TONE 2』にピックアップされて話題となっている。この先もCradleとその楽団が美しい名曲を残してくれることを望みたいが、先頃リリースされたコネクションの初作『Moon Water』では、ヴァイオリン担当の望月明香が“Take It Higher”の単独リミックスに挑戦していたばかり。こちらも壮麗にして重厚な出来映えで、演奏者個々の今後にも期待は膨らんでくるのだ。

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掲載: 2009年01月29日 14:00

更新: 2009年01月29日 18:10

ソース: 『bounce』 306号(2008/12/25)

文/狛犬

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