インタビュー

Cradle Orchestra

ヴェルヴェットの聴き心地を約束する壮大で麗しいバラード……他に類を見ないヒップホップ・オーケストラが紡ぐ最上級の美しさを全身で鑑賞しよう!


  Cradleとしてのファースト・アルバム『Attitude』から2年半――Cradleの2人、瀬戸智樹とDJ Chikaがいよいよ動き出す。とはいえ、その間も瀬戸はHiroki Mizukamiの『keep aLive』を全面プロデュースし、ChikaはInherit名義でのソロ・アルバム『Up The River』を発表するなど、2人はアクティヴな活動でその存在感を示し続けていた。そして、およそ2年前にグッド・ピープル“About You”のリミックスで初登場となったCradle Orchestraとしても、GOON TRAXの諸作にて数々のリミックスを担当。そのCradle Orchestraが、ついにフル・アルバムの完成に至ったのだ。

「もともとCradleバンドはやるつもりだったから、普通にその延長という感じです」(瀬戸)。

「そこに以前から制作やライヴに協力してもらっていたミュージシャンたちを迎えてCradle Orchestraになりました」(Chika)。

 自然な形で繋がっていったCradle Orchestraのメンバーには、主にMichitaro(ベース)、望月明香(ヴァイオリン)、石井あや(フルート)が名を連ねている。バンド・スタイルのヒップホップ・アクトは数多く存在しても、ヴァイオリンやフルート奏者も従えたオーケストラ調のものはかなり珍しい。それぞれがソロでの経験を活かしながらも、制作/レコーディングは新しい試みの連続だったようだ。

「メンバーといっしょにコードから考えたり、ホントに決まりはなくて自由に制作していきました。その時々に、浮かんだアイデアを形にしていくといった感じです。おかげでプリプロとアレンジ、レコーディングがすべて並行していて、みんなには迷惑をかけました」(瀬戸)。

 そして、約半年の制作期間を経て完成したアルバム『Velvet Ballads』は、ヴェルヴェットのように柔らかで上品な手触りと深い光沢が特徴的な一枚に仕上がっている。

「今回はどちらかというと計算された作品というよりは、その時々のインプロヴィゼーションをパッキングすることに重点を置いていたので、そういった部分を感じてもらえれば、と思います」(瀬戸)。

 今回迎えたMC陣には、ブラック・ソート(ルーツ)、タリブ・クウェリ、アロー・ブラック(エマノン)、CL・スムース、OC、オセロ(ライトへッデッド)……と、新旧を交えた多彩な名前がズラリと並ぶ。

「基本的に僕らが共演したいアーティストで、今回のプロジェクトに賛同してくれた人たちです。CL・スムースが目の前で歌ってくれたのはホントに嬉しかった。ブラック・ソートも5、6回アレンジしてくれたし、いまも現役でいるということの偉大さを感じましたね」(瀬戸)。

 サンプリングを駆使した『Attitude』、そして生演奏の魅力を体現した『Velvet Ballads』……2枚のアルバムを作り終えたCradleの2人に、サンプリングにはない生演奏の魅力を訊いてみた。

「僕の場合は純粋に自分の演奏が作品として残るという嬉しさがあって。オリジナルのフレーズ、アレンジの自由度の幅が魅力であり、難点でもあると思います」(Chika)。

「楽曲だけで考えれば、凄く人間らしさが出るというところですかね」(瀬戸)。

 2月には久々となるCradle名義でのミックスCD『Beyond The Horizon』のリリースも決まり、さらにはアロー・ブラックをフィーチャーした作品のレコーディングも終えているという。今後も数多くのプロジェクトを控える彼らの周辺から目が離せそうにない。

▼『Velvet Ballads』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

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掲載: 2009年01月29日 14:00

更新: 2009年01月29日 18:10

ソース: 『bounce』 306号(2008/12/25)

文/北川 達哉