こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

FAR FRANCE(3)

何か得体の知れないものが渦巻いてる

――それから、ちょっとおかしいと言えば、アルバム・タイトルの意味ですが。

畠山 〈あひゃらんけ〉って読むんですけど、2年ぐらい前にベースの松島くんがバーッてブログの文章を書いて、最後に締めの言葉を書こうと思ったときにキーボードをバババッて打ったら出てきた言葉らしいです。そのときは、バンド内や周りの友達とかで「〈あひゃらんけ〉って!」って盛り上がってて。で、今回アルバム・タイトルをつけるときにいろいろ考えたんですけど、コンセプトがないアルバムだったんで、意味を持たせた言葉をつけてもしっくりこなかったんですね。そこで、英が「あひゃらんけは?」って言い出して、〈あひゃらんけ〉をローマ字で書いてみたら尖ってる感じがカッコよかったんで、「これにしよう」と。意味がないところに意味があるね、って。

――意味、いろいろと考えてしまいました(笑)。

畠山 ちなみにどんなものを?

――得体の知れない雰囲気が、妖怪の名前っぽいな、とか。

豚汁 ああ、そういう雰囲気はありますね。

――あと、「ブラックジャック」のピノコの台詞で……。

 〈アッチョンブリケ〉だ! なるほど~。

豚汁 それ、今度から使おう。

――あれも言葉自体には意味がないですけど、その場に強引に落ちをつける妙な説得力がありますし。

畠山 でも、いろいろ意味を考えられるのはいいことというか。

 このアルバムを聴いて浮かんだイメージを、聴いた人それぞれが〈AHYARANKE〉にどう結び付けていくかっていうのを聞くのも楽しみで。タイトルに決まったときも、「これしかねえな」って感じでしたね。愛(前作の『LOVE』)から妖怪かよ、みたいな(笑)。

畠山 あ……(ここで四たびカット・インしそうになる)。

全員 (爆笑)。

 〈AHYARANKE〉っていう言葉からは、何にも予測がつかない。だから逆に、何か得体の知れないものが渦巻いてるこのアルバムとか、FAR FRANCEっていうバンド自体についても上手く表現できてるんじゃないかな、って思いますね。

畠山 意味を求めることに対するアンチテーゼじゃないですけど、疑問を持っちゃうことがあるんですよね。ちゃんと意味があるとか、何かを考えてることが素晴らしいとかっていうことじゃないだろう?って。自分たちは「ただ音を楽しむんだ」っていう意識が大きいバンドなので、意味のない言葉をドーン!って投げつけるぐらいがちょうどいいんじゃないかって思いますね。

――となると、FAR FRANCEっていうバンドの実態は、メンバー自身も掴み切れてない?

 『LOVE』から『AHYARANKE』へと変化したみたいに、『AHYARANKE』以降も常に変わっていくと思うんですよ。核となる〈ドロドロ感〉みたいな部分は変わらないですけど、そこに上乗せするものが時期によって変わってきてて、そこが掴みづらいところではあるんですけどね。

畠山 自分たちらしさを「こうです」って言えてしまったら、おもしろくないかな。いつの時代の音楽かもわかんないとか、何て言ったらいいのかわかんないとか、人によって「こういうバンドですよね」って言われることが全然違ったりとか、そういう方がおもしろいというか。

 ジャンルで括られちゃうと、聴く人も制限されちゃうなあと思いますし。USインディーとかポスト・ロックっぽいとか言われると、そういう音楽が好きな人にしか聴かれないような気がするんですけど、FAR FRANCEがやってる音楽って、幅広い人から聴いてもらえるものにどんどん変わってきてるなって思ってて。田舎の中坊がバンドに憧れて音を鳴らしてる、みたいな、どこかしらあか抜けない感じはずっと残ってますけど……残していきたいなって思ってますけどね。

畠山 既成のイメージに合致すると、ちょっとハイセンスに聴こえる、みたいなところがあると思うんですよね。たとえばポスト・ロック的なイメージに嵌まると、しゃれた感じに聴こえたり。自分たちはそういう枠に一切嵌めようとしてないから、おしゃれになりようがないっていうか。

――豚汁さんはどうですか?

豚汁 僕はそうでもないんですけど、ほかの3人はいろんな音楽をすげえ聴いてて、メタルとかグラインドコアが好きで、クラムボンも好きっていうやつが目の前にいるし(←畠山)、そういうバンドなんで、そのときのモードみたいなのを作品とかライヴに残せればいいんじゃないかなと思っています。

――ドラマ―としては、ひたすら3人の要求に応えていく、みたいな?

豚汁 そうですね。理不尽な要求に汗水たらして応える。

畠山 ドラムには抽象的な要求を出すんで。「ちょっとそこ、ヒリヒリした感じに叩いて」とか。で、豚汁さんが「え?」って言ってるそばで、英は「わかるわかる、そのヒリヒリした感じ」って言ってる。禅問答とか、大喜利みたいな感じですね(笑)。しかも、ちょっと険悪なムードだったりするっていう(笑)。よく考えたらバカバカしいことを、すごい真剣な表情でやってる(笑)。

豚汁 抽象的な表現で要求してくるわりに、「音符って16分なの?」って訊くと、「16分ってわかんねえよ!」って言われたりするんで(笑)。

畠山 豚汁さんは元吹奏楽部なんで、音楽記号的なことを……。

豚汁 音楽記号っていうか、〈あいうえお〉ぐらいの感じなんだけど(笑)。そういうことを言うと、(畠山を見て)こういう顔をされる(笑)。

――ポカーンって(笑)。

豚汁 基本的に楽器の音でしか会話ができないバンドかもしれない。

 あいうえおも大事ですけど、英語から覚えたっていいじゃない、って、俺はそう思うんですけどね(笑)。

豚汁 ただ、「これだ!」っていう瞬間は、4人で共有することが多いよね。

 そうだね。あいうえおだ、ABCだ、とか言い合っても、でき上がったものに対しては4人全員で「カッコいいよね」って言える。いい意味での〈ちぐはぐ感〉からカッコいい音楽ができていく、その過程もおもしろいバンドだと思いますね。

▼FAR FRANCEの作品

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2009年02月05日 18:00

更新: 2009年02月05日 22:21

文/土田 真弓