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インタビュー

FAR FRANCE 『AHYARANKE』 colla disc



  若冠20歳の4人組って……それ、30年前の話じゃないの!?――と、来週末公開のどこぞの映画のようなツッコミをカマしたくなるほどに、FAR FRANCEのファースト・アルバムにしてライヴ・アルバム『LOVE』にはとにかく圧倒された。サイケ、プログレ、ハード・ロック、パンク、ハードコアなど、ジャンルという枠組から完全に逸脱した破天荒ぶりに加え、時代感すらも読むことが不可能という得体の知れないサウンド。ツェッペリンもソニック・ユースもあぶらだこもメチャクチャに破壊して、なかでも特に尖った破片をグシャッと丸めて放り出したような粗暴さがありながら、そのイビツな音塊が妙にポップなフォルムを形成しているという……その、聴き手をなかば強引にオドロオドロしい音世界へと惹き込む異形のサイケデリック・ロックは、ひと言で言えば、〈何故だかわからないが、ものすごく格好良い〉ものだった。

 それからちょうど1年を経て到着したセカンド・アルバム『AHYARANKE』は、満を持してのスタジオ録音盤だ。いい意味で時流を度外視したヴィンテージ感溢れるリフの鋭さ、80年代歌謡の匂いすら漂うメロディーの人懐っこさ、寸止めに次ぐ寸止めを繰り返しながら不穏にドライヴする大胆な曲展開など、彼らのサウンドに宿る奇矯な美点がくっきりと浮き彫りになった本作は、やっぱり異様なまでにポップ。しかも、〈クリック無しルールに基づいたアナログ・レコーディング〉というDIY的な手法を採ることによって、前作のなかに充満していた原始的な衝動もしっかりと息づかせているという最強の布陣である。シンプルながら、ホラーまがいのサイケ世界を現出させる歌詞も素晴らしい……って褒めてばかりだが、仕方がないのだ。〈何故だかわからないが、ものすごく格好良い〉のだから。

 過剰だけれど病み付きになる――そんな奇天烈なポップ・ミュージックが特濃で盛り込まれた本作。これほどまでに時代もジャンルも超越した〈いいとこ取りサウンド〉は、なかなか作れるものではないでしょう……ということで、常人ならざる才能に敬意を表して、こう言わせてもらおうかと。次世代を担う変態バンド、ここにあり!

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2009年02月05日 18:00

更新: 2009年02月05日 22:21

文/土田 真弓

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