RADIO SLAVE
快調にリリースを重ねるレディオ・スレイヴ/レキッズが、あの名曲群をいよいよ銀盤化! このサウンドの奴隷にされたら、きっと今夜も眠れない……
レディオ・スレイヴことマット・エドワーズを、現行クリック~テック・ハウス最強のプロデューサーと呼ぶことに異論はないだろう。そもそも彼がシーンの表舞台に現れたのは、2004年に自身のレーベル=レキッドからリリースした一連のマッシュアップ作品でのことだ。スヌープ・ドッグやカイリー、ジェイ・Zらの楽曲を自在にマッシュアップしてRSやレディオ・スレイヴの名前で次々に送り出した彼は、その界隈を大いに賑わせた。並行してDJマキシの名でクロスタウン・レベルズに楽曲を残したり、スキントからマシュー・E名義でシングルをリリースしたり、はたまた親友のジョエル・マーティンと組んだ疑似エキゾ・ラウンジ・ユニットのクワイエット・ヴィレッジ(名前は当然マーティン・デニーから)でDJハーヴィー主宰のホワットエヴァー・ウィ・ウォントからシングルを発表したり……多様な名義とサウンドを駆使するその存在は徐々に注目を集めていったのだ。
そんななか「シーン全体が飽和状態にあると感じた」ため、マッシュアップ路線と同時にレキッド(レーベル)を終了させた彼は、2005年より自身のユニットとしてのレキッドを始動させる。レキッドは現在のレディオ・スレイヴに通じるドープな音響空間を活かしたエレクトロニカ~ダウンビートでカルト的な人気を博した。そして、同名義での『Made In Menorca』(2006年)を出したのとほぼ同時に設立された新たなレーベルこそ、彼が現在も拠点とするレキッズである。
レキッズでは、ブリープ音を散りばめたレディオ・スレイヴ名義での“My Bleep”、タイトル通りシカゴ・ハウス的な雰囲気に満ちたレキッド名義曲“Next Stop Chicago”など、80~90年代のテクノ/ハウス爛熟期の要素&空気感をクリック~テックなど最先端のフォーマットで再構築したようなサウンドが特徴となっている。また、フリークスやクラシックといったカルトなディープ・ハウス・レーベルを運営してきたルーク・ソロモンや、UKハード・ミニマルの巨人ミスター・G(元アドヴェントのコリン・マクビーン)ら、90年代のシーンを支えたUKのヴェテランが在籍しているのもレキッズの特徴だろう。
「僕らはUKのレーベルだし、やっぱり同郷のアーティストをレプリゼントしたいという気持ちになるね。特にルークはレキッドの突破口(レキッドの初リリースとなる“Lost Star”はクラシック発)を開いてくれた恩人でもあるし、恩返しできたのは嬉しいよ」。
そんなレキッズの絶好調ぶりは、先日リリースされたシングル/リミックス/DJミックスという3枚組のコンピ『Rekids Revolution』でも改めて体感できた。
「レキッズに関しては単なるテック・ハウスのレーベル以上のものだよ。そうありたいと思っている。あのコンピでは、現在の状況を一度きちんとまとめてプレゼンテーションしておきたかった。〈Revolution〉ってのは、そんな僕らの現在地を表現する最良の言葉だと思ってるよ」。
そんな充実作に続いてこのたびリリースされる日本編集盤が『No Sleep At All』。レキッズ及びレディオ・スレイヴの評価を不動のものにしたEPシリーズ〈No Sleep〉をまとめてCD化した待望の一作だ。ハービー・ハンコックをネタにした美しい“Dedication”のような曲もあるが、ほとんどが〈鳴り〉を重視したソリッドなミニマル・チューンである。
「ビートの鳴りはダンス・ミュージックの核とも言える重要な部分だ。何よりも重視してるし、興味を持っているよ」。
その最大の目玉は、〈Part 4〉に収録されていた“Grindhouse Tool”を現行ミニマル・シーンの最先端をリードするダブファイアがリミックスした“Grindhouse(Dubfire Terror Planet Remix)”だろう。このリミックスはハウス/テクノ問わずさまざまなDJにプレイされ、2008年を代表する特大フロア・ヒットとなった。
「あのプロジェクトはクリエイティヴ的な観点で本当に興味深いものだった。僕のオリジナルとダントン(・イープロム)のリミックス、両方のパーツを使っていたからね。最初から〈これはスペシャルなレコードになるな〉って予感はあったよ」。
レディオ・スレイヴとレキッズの動向から片時も目が離せないことを痛感させられる現在最高のミニマル集、それがこの『No Sleep At All』なのである。
▼レディオ・スレイヴのミックスCD。
ボリス・ドゥルゴスキとの2007年作『Radiodisco』(Ministry Of Sound)