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インタビュー

rega

じわじわと中毒者を増やすジャム・バンドの急先鋒! 〈声なき歌〉が繰り出すトリップ・サウンドは、どんな景色を見せてくれる?


  ファースト・アルバム『Million』をリリースした4人組プログレッシヴ・ジャム・バンド、rega。いまや日本にも数多く存在するインスト・バンドのなかでも、彼らの音のオリジナリティーは〈緊迫感〉と〈心地良さ〉の絶妙なバランスにある。スリリングなフレーズの応酬を見せる2本のギター、時に変拍子を用いたりファンキーなダンス・ビートを作り出したりと、自在にグルーヴを操るリズム隊。複雑なバンド・アンサンブルを鳴らしてはいるが、ストイックな求道者的感覚はない。むしろ、まるで音の万華鏡のようにキラキラした楽しさが、そこにはある。

「うちらが曲の楽しみ方をいちばんわかってるし、いちばん楽しんでますからね。だから変拍子とかを使っても、しんどい感じにはなってないと思うんです」(青木昭信、ベース)。

「良いフレーズが生まれたり、思わぬ化学反応が生まれた時ってワクワクするし、昂揚するし、テンションが上がるんですよ。その感覚をお客さんにも伝えたいですね」(井出竜二、ギター)。

 愛媛の幼馴染みである4人は、もともとインスト・バンドをやろうと思って始めたわけではないという。ポスト・ロックの鋭角的な切れ味とジャム・ロックの大らかな包容力を併せ持った彼らの音楽性は、さまざまな変遷があって辿り着いたものなのである。

「ルーツは日本語パンクなんですよ。中学時代はブルーハーツをよく聴いてました。で、〈AIR JAM〉世代のバンドからコーンやレイジ、レッチリに出会って。さらに東京に出てきてからはテクノとかいろんな音楽を聴きはじめて……という感じですね」(井出)。

 結成当初はヴォーカリストもいたが、インストで楽曲を作りはじめたことによってバンドの可能性が大きく広がったという。

「モヤモヤしたものが開けた感じはありましたね。自分たちのやりたかったことに近付いた感じがした。いまはそれを突き詰めているところですね」(青木)。

 昨年7月には初のミニ・アルバム『RONDORINA』を発表。全国ツアーの最中に、各地のスタジオで曲作りも進められた。そんな刺激も今回の『Million』には大きな影響をもたらしたのだそう。

「3か月くらい全国をひとつの車で旅をして、顔を見合わせてぶつかったり話し合いをしながらひとつの音楽を作っていく。その気持ちが収められてるアルバムなんですね。旅のアルバムだ、という提示もあります」(井出)。

 アルバムには絶頂に昇り詰めていくようなジャム・バンドらしい陶酔感と共に、さまざまな情景を思い起こさせるドラマティックな展開も描かれている。「言葉がないぶん、音やリズムに気持ちを乗せてるつもりなんです」(井出)と語るその饒舌なサウンドに一度触れて、ぜひ独特のトリップ感を味わってみてほしい。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年05月14日 16:00

更新: 2009年10月07日 02:12

ソース: 『bounce』 309号(2009/4/25)

文/柴 那典