インタビュー

mi-gu

さまざまな才能とのセッションで得た感覚を糧にして、より間口を広げたmi-guワールド。ちょっと不思議な音空間へようこそ!

  コーネリアスやくるりのライヴで、はたまたさまざまなレコーディング現場で、そのしなやかなビートを刻み続けてきたドラマー、あらきゆうこ。彼女が「ドラムと声だけを使って何か出来ないかなあと思ってひとりで作りはじめたんですけど、試しに小山田(圭吾)さんに聴いてもらったら〈いいじゃん!〉って言ってもらえて。それで調子に乗って(笑)」といった具合に始めたソロ・プロジェクトがmi-guだ。これまでに発表した2枚のアルバムは海外でもリリースされ、ワールドワイドな評価をいきなり獲得。そしてこのたび3年ぶりとなる3作目『pulling from above』が届けられた。わずかな音数でフリーフォームなサウンドスケープを展開するスタイルはこれまで通り。だが、パーソナルなスケッチという印象だったこれまでの作品と比べると、新作にはもっと開放的でポップな手触りがある。

 「基本的に私は引きこもり系なんですけど、それが年齢を重ねるなかで変わってきて。もっと近い距離で人と接することができるようになったんです。だから1枚目(『migu』)とかは暗いんですけど(笑)、今回はもっと元気な感じ。みんなのパワーをもらって、いっしょに音楽を届けたいといまは思ってます」。

 そう語られる通り、本作には彼女の盟友たちがズラリと揃っている。コーネリアスのバンド・メンバーが集結し、まさにコーネリアス印のデジタル・ファンクを聴かせる表題曲もあれば、マイク・ワット率いるバンド=ペリカンマンによるmi-gu楽曲のカヴァー(!)もある。純然たるmi-guの作品というよりも、mi-guを媒介にしてさまざまなアーティストの個性が溶け合っているような趣だ。その自由な感じも最高に楽しい。

 「誰かのサポートをしたり、バンドでいっしょに演奏すると、その人たちのカラーが入ってくるんですよね。マイク・ワットと演れば無意識にマイクっぽいフレーズが入ってくる。そうやって身近にいる人たちの影響を自分なりに消化していければいいかなあって。オリジナリティーは自然に出ると思うんです」。

 アブストラクトでミニマルなmi-guの音楽は、実験的と形容されてしまってもおかしくないものだが、彼女のポエトリーリーディング然とした柔和な声が全編にファニーでチャーミングな空気を吹き込んでいる。その親しみやすさはまぎれもなく、mi-guだけのオリジナリティーと言えるだろう。


2003年作『migu』(ATSUGUA)

▼『pulling from above』に参加したアーティストの作品を紹介。

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掲載: 2009年05月28日 17:00

ソース: 『bounce』 310号(2009/5/25)

文/澤田 大輔