Boom Boom Satellites

　〈ロック・バンドというフォーマットでダンス・ミュージックを鳴らす〉というミッションに対するひとつの到達点となった三部作『FULL OF ELEVATING PLEASURES』『ON』『EXPOSED』を経て、BOOM BOOM SATELLITES（以下、BBS）が約1年半ぶりのオリジナル音源＝4曲入りのニュー・シングル“BACK ON MY FEET”を完成させた。ヴォーカルを軸にすることでトラック制作のルールが取り払われ、これまで以上にディープかつエモーショナルな音像が広がる本作について、中野雅之（ベース／プログラミング）と川島道行（ギター／ヴォーカル）に話を訊いた。

音像の深さは、全部ヴォーカルそのものに引っ張られる感じ

――今回のシングル『BACK ON MY FEET』の制作はどんな感じでスタートしたんですか?

中野「合間にライヴをやってるんだけど、ずっと制作はしていて。1年ぐらい作り続けていましたね。ホント、長いことやってるなって感じですけど」

――『FULL OF ELAVATING PLEASURES』『ON』『EXPOSED』の3枚でBOOM BOOM SATELLITESのアップリフティングな側面はほぼ極めたかなという感じがあったじゃないですか。実際、中野さんは当時のインタヴューでも「やり切った」「次は違うことをやりたい」って仰っていましたし。で、今作は、アッパーなサウンドではあるんですけど、聴いた印象がもっとディープだし、エモーショナルな方向にスイッチした感じがあります。ここらへんは現在のBBSのテーマに繋がっているんでしょうか?

中野「意識的ではないですけど、作っているものの傾向ではありますね。どの曲を抜き出しても大体こんな感じのものにはなりそうです。前作に比べるとスケールが広かったり深かったり大きかったり、メランコリックだったりって感じですね」

――川島さんはいかがですか?

川島「そうですね。音の世界観が広くなった分だけ、自分の書く歌詞の世界というのもより内面に向かっている感じになっていますね」

中野「いつもそうですけど、自分が感動できる音楽を作っているからね。それって日々変わっていくし、何によって変えられるかっていったら時代だったりするので、それを反映させたものがこういう音楽なんですよね。僕らが聴きたい音楽っていう」

――具体的に楽曲制作における変化はあったんですか?

中野「けっこうシンプルに、ソングライティングで勝負するって感じでしたね。前作だとソングライティングも大事だけど、先に曲のテクスチャーを作っていく軸みたいなのが他にあった。コンセプトありきだったりとか、そういう発想ですね。軸となるアンテナが一個あって、そこから曲が派生していく。ヴォーカルのスタイルだったり、コード感とかシンセ・リフとかギター・リフとか。とっかかりは曲自体とは別のところにあるっていう。でも今回のは、言ってみればアコギ一本で歌う、ピアノ一本で歌うような感じ。アレンジはそれらに対する肉付けという感じでしたね。メロディーが主体になっていたり、ヴォーカリストが訴えかけてくる感じに焦点を当てているので、音像の深さは、全部ヴォーカルそのものに引っ張られていく。だから、まずはヴォーカルありきで、それをサポートするミックスやバランスを考えたりしましたね。特に今回は」

――そうなると川島さんにかなりのプレッシャーというか重責がかかってくることになりますよね。

川島「そうですね。最初は前のアルバムの続きのようなスタイルの歌い方をしてたんですけど、それよりもっと低い声で歌うようにディレクションを受けて、探りながらやっていくなかで、出てきた雰囲気だったりメロディーがコレだったんですよね」

中野「歌が良くないとどうにもならないので、そういうニュアンスをちゃんと捕まえるんです。それってもう、動物ウォッチングみたいなものでね」

――ブースのなかの動物ウォッチング（笑）。

中野「3曲だけど歌録りに3か月かかってるんじゃないかな。期間的に言うと、去年の末から〈ダメだぁ!〉って感じの3か月（笑）」

川島「大晦日返上でスタジオに入ってるっていう（苦笑）」