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インタビュー

cro-magnon

地下から地上まで、そして宇宙まで、どこまでも自由なサウンドで次々にボーダーを取っ払う三匹と、今夜はどこで踊る?


  イヴェント〈nbsa+×÷〉のageHaでの開催、カヴァー企画盤『MELLOW OUT & ACOUSTIC』でのメロウな展開、アシッド・ハウス的な展開すら見せたオリジナル作『III』、欧州8都市へのツアー……この1年、各地のクラブ・イヴェントやフェスで爪痕を残しながら、音源面でもさらに歩を進めてきたcro-magnon。演奏家気質の強い3人が、ベースラインや音響といった余白のエリアを技巧とアイデアで補完して確立したスタイルは、もはやお家芸の境地に達している。そんな絶好調の証左か、ニュー・アルバム『4U』で聴けるのはネタ切れ知らずの軽やかさだ。

 「(コスガ)ツヨシが名曲のフレーズをどんどん入れてくるんだけど、凄いハマるんだよね。そういう昔の良い音はどんどん採り入れていきたい」(大竹重寿、ドラムス)。

 「TWIGYさんとやった“PUSH!”とかもブロンディの“Rapture”やし(笑)。ふだんDJを聴いていても、謎のテクノにいきなりウォーのフレーズが入ってきたりして、盛り上がったりすることがあるから」(コスガツヨシ、ギター/ベース)。

 リキッド・リキッドのノーウェイヴ・ドラム、サン・ジェルマンのジャズ・ハウス、ブラックコックのロック趣味にアフリカ音楽化するミニマル・ハウス……日々フロアを渡り歩く彼ら特有のザッピング感覚はいよいよ健在で、その遊び方には余裕すら感じられる。ゲストにはあのロイ・エアーズやJazzy Sport入りしたTWIGYに加えて、KINGDOM☆AFROCKSのIZPON、SOIL&“PIMP”SESSIONSのタブゾンビ&元晴ら。特に来日時に共演したロイ・エアーズとの“Midnight Magic”は必聴モノで、御大マナーな編曲にロイも見事なヴァイブとヴォーカルで応えている。

 「集中力が凄い。よくその歳で最後まで続くわ、っていう凄さ。彼は〈今日はダルいからやりたくないなっていう時があっても、バチを持ってステージに上がると凄く楽しくなる〉っていう話をしていて、凄く共感した」(大竹)。

 『4U』の締めは、東京の景色から嗅ぎ取れる陰陽と刹那を犬式(活動休止中)の三宅洋平が読み切った“TOKYO TIMES”。金子巧(キーボード)によるスピリチュアル・ジャズ調のピアノに乗せ、野性のクロスオーヴァー観が綴られる名曲だ。

 「“TOKYO TIMES”っていう曲名にしようってずっと話してて。俺ら的なライフスタイル、例えば吉祥寺のDJバーで呑んでるような奴らの会話みたいな目線の歌詞を書いたら俺は感動するよ、って洋平に言って」(大竹)。

 8月には〈RISING SUN〉にも出演。「いろんな人に聴いてもらいたいっていう前向きな気持ちになってきた。煮詰まるほどには、まだまだ全然やりきってない」(大竹)と語る彼らは「打倒アジムス!」と笑い、また夜のセッションに消えていった。

 「音楽ってお客さんとのヴァイブの交歓だなって、ヨーロッパに行って本当に思った。向こうが〈最高!〉ってアクションをくれて、こっちがそれに対して、他人任せじゃなく自分として納得できる演奏で返して。そういった意味で、この夏はフェスを利用してアガりたいですね」(大竹)。

▼cro-magnonの作品。

▼『4U』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年08月05日 18:00

ソース: 『bounce』 312号(2009/7/25)

文/リョウ 原田