インタビュー

RYUDEN

日本人らしいセンスで、世界中に〈エヴァーグリーン〉な音楽を届ける3人。目を閉じれば、そこにはいつもと違う景色が広がっているよ!


  めざすのは〈日本人らしからぬ、日本人らしいバンド〉。その意図をヴォーカル/ギターの佐々木龍大(発言:以下同)はこう説明する。「世界中の人に聴いてもらいたいと思って曲を作っているけど、日本人だからこそできる音楽がある、とも思ってます。地球生まれの日本人として、すべての人と音楽で繋がっていきたい」と。

 「60~70年代の音楽、どちらかといえばポップなもの」をルーツとする佐々木、70年代のソウル/ブルースに造詣の深い伊藤DEN昌史(ベース)、ジャズやワールド・ミュージックに精通する井上英司(ドラムス)による3人組、RYUDEN。彼らのファースト・アルバム『ONCE UPON A TIME』には、佐々木のコメント通り、幅広い洋楽のエッセンスと日本人ならではの叙情性がナチュラルに混ざり合っている。すべて英語詞でありながらJ-Pop好きにもアピールする親しみやすさを備えている。このバランス感覚はとても貴重だ。

 「自分としてはポップソングを作りたいと思っていました。メンバーにはそれぞれブルースやジャズといったルーツ・ミュージックが根にあるからか、ゴチャ混ぜの匂いが出たものになったかと。ジャンルの枠から外れようと意識したつもりもないけど、3人の個性が混ざることでRYUDENのサウンドになったと思います」。

 UKギター・バンドの影響が感じられる“1996”、3人のオーガニックなインタープレイが楽しめる“Squall song”、古き良きスタンダード・ナンバーの雰囲気を湛えた“Lovely brown rum cola”――カラフルな意匠が凝らされた楽曲は、決してマニアックな趣味に終始することなく、聴く者に懐かしい風景をイメージさせる。この映像喚起力もまた、彼らの大きな魅力だろう。

 「自分の曲では何かメッセージを伝えたいというより、風景を思い浮かべてほしいという気持ちがあるんです。〈ONCE UPON A TIME(昔々)〉と聞いたときに頭に浮かんだ映像、それを糸口にして曲を聴いてもらいたいです」。

 またボーナス・トラックとして収録されたマルーン5“This Love”のカヴァーにおける、滑らかで切ないヴォーカルも印象的だ。

 「自分にとっての〈歌の先生〉はボブ・マーリーですが、マルーン5のアダム・レヴィーンにもボブ・マーリー的な感じを受けたんです。カヴァーは初めてだったけど、楽しかった」。

 これからの目標はずばり、「音楽を通してたくさんの人を感動させられるようなアーティストでありたい」。〈エヴァーグリーン〉というフレーズを久々に思い出させてくれる、普遍的なセンスを持ったバンドの登場である。

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掲載: 2009年08月26日 18:00

更新: 2009年08月26日 18:11

ソース: 『bounce』 313号(2009/8/25)

文/森 朋之