インタビュー

SOIL&“PIMP”SESSIONS

各々の高いプレイヤビリティーやバンドでの圧倒的なパフォーマンスで、世界的に認知を広めている彼ら。円熟と新味を同時に見せた新作は、さらに濃く深く……

  SOIL&“PIMP”SESSIONSがさらに進化しようとしている。いや、進化というより〈深化〉と言ったほうが良いだろうか。それは、バンドとしての裾野をいっそう広げつつ、自分たちの存在をよりリアルにしていく作業、ということなのかもしれない。六本木で出会った6人組による6枚目のニュー・アルバム『6』は、ここ数年であきらかにバンドとしてプログレスしている彼らの手応えが感じられる力作だ。

 「ヴォーカルをフィーチャーした曲を入れようというのは前々から考えていました。でも、ちゃんとバンドとしてやれることをやってからにしようと思っていたので、これまではあえてやってこなかったんです」(社長、アジテーター)。

 「ジェイミーといっしょにやった曲もそうですが、今回はライヴっぽい偶発性が出た曲が多いんです。やっぱりツアーをたくさんこなしたことで、瞬発力みたいなものが付いたのかも」(みどりん、ドラムス)。

 新作には椎名林檎(彼女の最新作『三文ゴシップ』でも共演している)とジェイミー・カラムがヴォーカルで、KINGDOM★AFROCKSのIZPONがパーカッションで参加したほか、DJKENTAROとのコラボもある。深化を裏付ける最大の要素とは、こうした外部との化学反応を採り入れたことだろう。では、ライヴでの共演はあれど、自身の作品は6人だけでしっかりとグループのアウトラインを固めてきた彼らが、今回〈外交〉に挑戦したのはなぜだったのだろう?

 「自然な流れだったんです。ここ数年は国内だけでなく海外でも活動してきて、そのなかで交流するようになった方に参加してもらうことにしたのも、人脈で活動を広げてきた僕らにしてみればごく自然なことで」(みどりん)。

 「林檎さんとは、ウチのメンバーがお兄さんの椎名純平さんの作品に参加して、その頃から仲良くさせてもらっているんです。今回はちゃんと曲作りの段階から彼女と意見を交換しながら仕上げていって、アレンジ部分もアイデアを出してくれました」(社長)。

 共演曲に限らず、本作からは〈ファンク+ジャズ+ヒップホップ+ラテン+α〉とでも言うような彼ら特有の図式が、これまでになく昂揚感を持って伝わってくる。すでにある価値観から飛び立ちたいと願うかのように堂々と音を轟かせた仕上がりは、もちろん力強くもあり、パッションに満ちたものでもあり、そして意外なほどに優雅だ。

 「各々の経験値が上がってきたということなのかもしれないですね。あと、このバンドはメンバー全員がプロデューサー的な視点を持っていて、それがこれまでよりも確実に強まっているんです。そういうリスナーとしての目線と客観的なヴィジョンが、バンドを自然と成長させてきたんじゃないかな」(社長)。

 「そういう意味では6人がそれぞれやってきたことの集大成のようなアルバムかもしれませんね」(みどりん)。

 かつて、彼らの音源を気に入ったジャイルズ・ピーターソンがUKで頻繁にオンエアしたことは有名な話。そのジャイルズやガリアーノ、ブランニュー・ヘヴィーズら90年代初頭のアシッド・ジャズ周辺アーティストがジャズを再定義させたように、彼らも深化を遂げることで新たな音楽の価値観を構築しているということなのかも。

 「それは、僕個人では考えていますね。僕らの作品を通じて、こういうおもしろい音楽もあるんだよ、ということを若い人に知ってもらいたいと思っているのも、ジャイルズなどの影響かもしれないです」(社長)。

 「僕らが活動しはじめた2000年代は、またクラブやライヴハウスがおもしろくなってきた時代。そういうなかからシーンをおもしろくしているバンドもたくさん出てきているんで、新たな価値観の提案も、より伝わりやすくなっていると思いますよ」(みどりん)。

▼SOIL&“PIMP”SESSIONSの作品を一部紹介。

▼『6』に参加したアーティストの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年09月16日 18:00

更新: 2009年09月17日 14:59

ソース: 『bounce』 314号(2009/9/25)

文/岡村 詩野