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インタビュー

RHYMESTER(2)

今回は、曲にエモーションを乗せたかった

――で、各々そういう活動をしながらも、やっぱり次のRHYMESTERはどうするかみたいなことは考えてるもの? それとも、そのタイミングがくればおのずと答えは出る!みたいな感じで特には考えてなかったとか。

U「どうだったけかな……ネタを書き留めたりするようなことはなかったけど、“ONCE AGAIN”のもとになるようなアイデアを最初のミーティングで持っていってるわけだから、ずっと何かしら考えてはいたんだろうな。まあ、そういうぼんやりとあるものが本当に形を成していくのは実際に作りながらだったりするんだけどね」

J「俺の場合、(カップリング曲の)“付和Ride On”のトラックは思いっきり最初から用意してた。でもまあ、自分の音楽を追求していくことは自然にRHYMESTERに還っていくことになるわけなんだけどね。ただ、“付和Ride On”みたいに意識的に次のRHYMESTERを想定してビートを作ることもあったね。あれはハウスやテクノのアイデアをいただいた曲で、前から使おうとは思ってたんだけど、タイミングが難しいかなって。でも、ハマったらまちがいないものになるって確信はあったかな」

D「マボロシやってるときはそっちに専念してるんだけど、そのなかで何が必要で何が必要じゃないのかは見えてくるからね。さっきはうまく言えなかったんだけど、俺がマボロシの活動をしながら何をやってたのか……たとえば竹内朋康もそうだけど、やっぱり〈音楽の人〉なんだよ。そこから派生してコラボした人もだいたい音楽の人だし、さらにバンドもいると、俺以外全部音楽の人って状況。そのなかで新しいものを作ろうともがいていたわけだけど、そうすると結局〈俺ってなんなんだ?〉ってことになるんだよね。〈ラップって何? ヒップホップって何?〉みたいなことをすごく考えさせられる。で、〈ポップスをポップスたらしめてるものって何なんだろう?〉ってことも考えちゃうんだよ、やっぱり。次に俺たちがアルバム作る時、それがアンダーグラウンドだけで評価されればいいって作品では絶対ないだろうし、そういうところと戦っていかなくちゃいけないって意識がどんどんデカくなってきてるからさ。そのへんを踏まえて、じゃあ次のRHYMESTERにはどういうメッセージが必要なのか、どういう強さの曲が必要なのか、そのためには制作をどういう形でやればいいのか……ネクスト・レヴェルなものを作るにはトラックを外注してみるかとか、もうちょっと分業制が必要になってくるんじゃないかとか、いろいろ考えるわけだよ。今回みたいに俺にトータル・ディレクションっていう地位を与えてもらって、さらにレヴェルの高いものをめざしていかなくちゃいけないんじゃないかとか……そういうことをマボロシの3枚目(『マボロシのシ』)を作りながらずっと考えてた」

――そもそもミーティングは結構頻繁にやってたの?

D「今年入ってからだよ。最初にやったのは2月かな」

――じゃあやりますか!ってなったのは?

J「2月の終わり……呑みーティング」

――それは3人の意見が一致した感じ? それとも〈いやー、まだ早いでしょ!〉みたいな声もあったとか。

U「最初は決起集会とか言って集まったんだけど、そもそもやるべきかどうかを話し合おうってことになったんだよ。いま言うべきことがあるのか、っていうところからだよね。20周年だからって無理矢理やるのもねー、みたいな。そのぐらいのテンション。そんななかで〈なんちゃらライジング〉とか〈ライジング・アゲイン〉みたいな言葉が出てきたんだよ。ゼロから始める、とか。完全に“ONCE AGAIN”のコンセプトだね。いまの日本にも通じるメッセージだし、俺ら自身の歌でもあるし、日本のヒップホップ・シーンのことにも受け取れる、と」

――早い段階でビシッと出たんだね。

U「テーマはね。曲像はまたちょっと違ったりするんだけどね……最初はもうちょっとアッパーなのをイメージしてた。もうちょっと普通のヒップホップというか」

――Dくんが総指揮を務めるってアイデアも最初のミーティングで出たの?

U「2度目の時だね」

D「(トラックを)外注してみるかって話の延長線上で出てきたのかな」

U「それでいろいろさ、こんな人に頼もうとかこんなアイデアがあるとか話してたんだけど、これ下手すると完全にとっちらかる恐れがあるよなって話もしてて……まあ、Dが総合ディレクションをやるって意味では、決定権って感じではないけど、いままでも立場的には似たようなところがあったんだけどね。構造は似てるんだけど、より明確になったっていうか。で、特に外注するのであればそういう役割が必要になってくるだろうと。それで、もうBACHLOGICにはいますぐ連絡しようよぐらいの感じだったんだよね」

――おー、盛り上がるねぇ。その時点で名前があがったプロデューサーはBLだけ?

U「いや、いっぱいあがった。しかもね、実は非ヒップホップのプロデューサーの名前も結構あがってる」

――へぇー……。

U「ただ、やっぱり今回はヒップホップかな?みたいな……」

D「それは4回目ぐらいのミーティングかな? ちょっと可能性が広がりすぎちゃったから、ちょっと待ってちょっと待って、って。今回は〈ヒップホップ・イズ・バック〉なアルバムじゃないとダメだからって話をして、それで絞っていった感じかな」

U「そんななかでもBLだけは筆頭なんだよね、常にね」

――じゃあビートがBLに決まって、より具体的に曲の内容を固めていくにあたってはどんなことを話し合った? どんなハードルを自分たちに課してたか、ということなのかもしれないけど。

D「曲の内容や方向性はだいたい宇多さんから出てきて……タイトルも宇多さんだね。で、俺はそれをどう曲にするかっていう方向付けかな。とにかく今回はストレートに出したいんだってことと、曲にエモーションを乗せたかった……その2点かな」

U「ストレートとかエモーションっていうのは、最初のミーティングですでに出てきてた。今回はあんまりひねらないでいこうよ、みたいなね。Dにさ、〈サイタマノラッパー〉って映画観たんだよって話してさ。熱さみたいなのがふたたび必要なんだよ、って。クラブ・サーキットで地方回った時も胎動としてそういうのがあったしね。ある種日本のヒップホップ・シーンの夜明け前みたいなところもあると思うし、今回はもう泣かせるぐらいの気持ちで、みたいな。そのへんはけっこう一致してたね」

D「だからBLには、エモーションが乗せられて、最近のBLの作風よりはシンプルなビートにしてくれって発注した。ドラムのパターンとかもシンプルで」

U「そうそう。で、発注の時に〈BPMどのぐらいって伝えようか?〉〈うーん……普通?〉みたいな(笑)。極端に速かったり変則ビートだったりすると困るからさ」

D「かつクラシック、みたいな。そういうのは頼まれるほうとしては一番困るんだけどね(笑)」

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掲載: 2009年10月14日 18:00

更新: 2009年10月14日 18:37

文/高橋 芳朗