インタビュー

perfect piano lesson

技巧派好きも納得の3重奏で注目を集める彼らが、久々にフル・アルバムを発表。ファンタスティックな物語の世界を旅しません?


  ギター、ベース、ドラムという、3つの楽器が生み出すアンサンブルのおもしろさをとことんまで追求しながら、あくまでも歌のメロディーはポップで聴きやすいものにすること。言葉で説明するのは簡単だけど、実際に成立させるのは難しい――そんな音楽を絶妙なバランス感とキレ味で響かせる3人組、perfect piano lesson。8月に発表した、同じく残響に在籍する盟友である3ndとのスプリット盤『black and orange』も好評を博している彼らが、ミニ・アルバム『terra incognita』から約1年ぶり、フル・アルバムとしては実に約3年ぶりとなる2作目『Wanderlust』を完成させた。

 「今回の作品は、録る段階でホントに納得いくまで音を作り込んで、あとはミックスで音量調節すれば良いってレヴェルまでやることができたんです。すごく自信のある一枚になりました」(大屋卓朗、ベース)。

 「アンサンブルをあえて難しく複雑にしよう、みたいなに考えていた時期もあったんですけど、それを経ていまはなるべく無駄な音や展開は削っていこうって意識になったんです。なので以前よりも良い意味ですっきりして聴きやすいものになっていると思います」(勝谷晋三、ドラムス)。

 「複雑にやろうとすればいくらでもできると思うんですよね。でも、それを観たり聴いたりした時に、〈すごい!〉って印象は持たれるかもしれないけど、曲としてはあんまり(心に)残らないような気がして。複雑なもの、イコールおもしろいとは限らないじゃないですか。だからちゃんとサビがあってポップな部分があるようにっていうのは、すごく大事にしているところなんですよね」(白根佑一、ギター/ヴォーカル)。

 90年代のUSオルタナ、2000年前後の日本のインディー・ロック、70年代の初期パンク~ハードコアと、3人各々のルーツが随所に感じられるアンサンブルの妙味はもちろん、それを邪魔しない……否、むしろ楽器のひとつのようにそのド真ん中を自由に駆け抜けていく、ポップな歌が耳に残る。

 「僕たちはひとりのソングライターが全部の曲を作るっていうバンドじゃないんですよね。基本は3人でセッションしながら曲を作っていって、そこに鼻歌みたいな感じで僕が自然に歌を付けていくことが多いんです。だからそういうふうに聴こえるのかもしれないですね」(白根)。

 歌のメロディー同様、全編英語で綴られているその詞世界も、すべてサウンドからイメージされたものであるという本作。そのタイトルが『Wanderlust』(=放浪癖)、〈旅に恋焦がれる心〉とは、いったいどういうことなのだろうか?

 「最初からテーマを決めていたわけじゃないんですけど、作っている段階で物語調の歌詞が多いような気がしたんです。あと楽曲のヴァリエーションが広がったこともあって、全然別の世界に住んでいるいろんな人たちの話を集めた、短編連作集みたいな印象があったんですよね。だからそういう人たちの話を、リスナーが旅するように聴いていく形にしたら、ひとつの作品としてまとまりが出来ておもしろいんじゃないかと思って。それでこのタイトルにしたんですよ」(白根)。

▼perfect piano lessonの作品を紹介。

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掲載: 2009年10月21日 18:00

ソース: 『bounce』 315号(2009/10/25)

文/麦倉 正樹