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インタビュー

DAS POP

  エレクトロ界隈と親和性の高いロック/ポップ・シーンにおいて、現在もっとも騒がれているバンドといえば、ダス・ポップをおいて他にいないだろう。ジャスティスがDJプレイで使用したり、セバスチャンが“Fool For Love”をリミックスするなどエド・バンガーとの親密さはもちろん、モデュラーの定番コンピ・シリーズ〈Leave Them All Behind〉にもピックアップされるなど、絶対的な人気を誇るレーベルからの支持をガッチリと掴んでいることが、それを証明している。しかもユクセクやブロディンスキによる“Fool For Love”のリミックスもフロアで好意的に受け入れられており、現在バンドが非常に良い環境に置かれていることを想像するのは容易い。

 「メンバー・チェンジもあったけど、15~16歳の時にボンゴとチェロ、トライアングルにギターなどを用いた編成でバンドを始めてから、メンバーとはもうかれこれ10年以上になるんだ」とフロントマンのベント・ヴァン・ルーイ(以下同)も語るように、彼らのキャリアは意外にも長い。これまでのダス・ポップは、ヒネリの効いたポップスを凝ったアレンジで聴かせるアート志向の強いサウンドを特徴とし、地元ベルギーでは巨大フェスにも出演するほどの人気を手にしていた。しかし自分たちのサウンドをもっと世界中に広めようという思いから、そこそこの成功を捨てて一念発起。ニュー・アルバム『Das Pop』では進化することを選択したのである。

 そのきっかけとなったのが、プロデュースを買って出た「幼馴染みに近い存在さ。10年以上の付き合いで、お互いアーティストとしてデビューする頃から楽器を貸し借りしたり、いろいろ意見を言い合ったりしてた」というソウルワックスのディワラ兄弟。シンセやシーケンサーを一切使用しないよう、彼らがバンド側にルールを設けたことも功を奏し、本作ではいままでになく非常にシンプルなメロディー、演奏、アレンジが展開されている。まるで直接リスナーに語りかけてくるような生々しい音を、ダス・ポップは獲得することに成功したのだ。

 「ジャムって録るスタイルを勧めてくれたのがソウルワックスの2人なんだ。昔からお互いのライヴに行き来していて、〈そのライヴ、そのパフォーマンスが君たちのアドヴァンテージだ〉って言い続けてくれて、気持ち良いくらいすぐにアルバムは完成したよ。いままでの俺たちはアレンジやポスト・プロダクションにこだわりすぎていた。下手したら録音の3倍も4倍も時間をかけていじっていたんだ。でも今回は歌詞も含めて王道ポップスの法則に従い、自然に、そして絶好のタイミングで完成した自信作だよ」。

 先述のスマッシュ・ヒット“Fool For Love”をはじめ、収録曲はどれも呪縛を解かれたように清々しく開放的な空気で満ち溢れ、昂揚感のあるメロディーを持ったグッド・ソングばかりが収録されている。

 「これはよく言ってることなんだけど、魔法にかかったような気分になれる曲こそ〈ポップソング〉と定義できると思うんだ。あと俺たちのレコードもそうだけど、基本は3分くらいの曲にしないとダメだね。だって歴史的に成功しているポップソングはすべて3分くらいなんだから」。

 バンド名の通り究極のポップ・ミュージックを追い求めるダス・ポップ。ベントにとっての理想の姿はマイケル・ジャクソンにあり、「“The Way You Make Me Feel”のPVを初めてTVで観た時の衝撃は忘れられない。人生を変えた曲なんだ」という具合に相当な影響を受けている様子だ。メンバー各々が新人の気持ちで臨んだという『Das Pop』は、マイケルに近づく第一ステップとなることだろう。

PROFILE/ダス・ポップ

ベント・ヴァン・ルーイ(ヴォーカル)、レインハード・ヴァンベルゲン(ギター)、ニック・ミュール(ベース)、マット・エクルス(ドラムス)から成るベルギーはゲントの4人組。同じ学校に通うベント、レインハード、ニックが94年に母体となるバンド、シングス・トゥ・カムを結成。改名後の98年に地元のコンテストで優勝。翌年、PIASからデヴューEP『Electoronica For Lovers』をリリース。2000年にファースト・アルバム『I Love』を、2003年に2作目『The Human Thing』を発表。2007年に配信限定となる3作目『Fuckland』が話題を呼び、ジャスティスやゴシップの前座に抜擢される。このたびニュー・アルバム『Das Pop』(N.E.W.S./EMI Music Japan)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年11月18日 18:00

更新: 2009年11月18日 18:07

ソース: 『bounce』 316号(2009/11/25)

文/青木 正之