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インタビュー

COBBLESTONE JAZZ 『The Modern Deep Left Quartet』

 

CobblestoneJazz -A

ワゴン・リペアを主宰するマシュー・ジョンソンを中心に、ダニュエル・テイトとティガー・デュラのトリオで活動してきたコブルストーン・ジャズ。ダニュエルのフェンダー・ローズを中心としたジャジーなサウンド、ライヴでより顕著になる(テクノにしては珍しい)セッション的な演奏が幅広いリスナーから注目され、2007年のファースト・アルバム『23 Seconds』は各方面のメディアで年間ベストに選ばれるほどの高い評価を得た。そして約2年ぶりに登場した新作『The Modern Deep Left Quartet』での彼らは、ワゴン・リペアなどで活動するモールを新たに加え、タイトル通りのクァルテットに発展している。

「ダニュエルが新しいバンドを始めようと思って以来、ダニュエルとティガーは数年間いっしょに活動してきたんだ。ダニュエルのアイデアは、俺にベースラインとドラムス、ティガーに味わい深いサウンドとパーカッション、そしてモールにターンテーブルとエフェクトを演奏させるというものだった。そもそもコブルストーン・ジャズの原型はそこから生まれたんだ。いっしょに演奏しはじめた頃からモールを含めた4人でステージに立っていたんだよ。トリオ編成になったのはただ単に彼がモントリオールに引っ越してしまったからなんだ。いまはみんな同じ街に住んでいるし、何より、3人より4人で活動したかった。3人よりも4人のマニアックなアーティストがステージに立つほうがベターだからね」(マシュー・ジョンソン:以下同)。

前作には、ボーナス・トラック扱いながら“Dump Truck”や“India In Me”など、ミニマル色の強いフロア仕様のトラックもあったが、新作ではウワモノの展開に合わせて微妙にリズムが変化していく先行シングル“Chance Dub”や涼しげなローズの音色を軸にビルドアップされた“Sun Child”など、ループ中心のダンス・ミュージック~テクノというよりもさらに有機的でミュージシャンシップの高い楽曲が並ぶ。

「(曲作りの方法は)アドリブで演奏することもあれば、それぞれのパート制作にフォーカスすることもある。出来上がったパートにみんなが満足いったらそれをすべて実際に演奏し、ミックスとアレンジを加えてまとめ上げていく。それによって俺たちが求めている人間的な感覚が楽曲に生まれてくるんだ。新作を前と異なる雰囲気にしようという意図はなかったよ。でも、それぞれの楽曲が完成した時、みんなで驚いたんだ。もちろん、レコーディング環境の変化も影響していると思うけど、前作のリリース以降、自分たち自身、そして世界規模でもさまざまな〈変化〉があった。それらが反映されているんだと思う」。

新作におけるサウンドの進化、ひいてはコブルストーン・ジャズという〈テクノなのにバンド〉というコンセプトの中核となるものが、一般的なテクノのそれとは大きく異なるライヴでの姿だろう。各メンバーが互いに向き合い、アイコンタクトやジェスチャーによってフレキシブルに展開されていく演奏は、『23 Seconds』に収録された40分強のライヴ・テイク、あるいはこれまたテクノでは珍しいライヴDVD「Live At Space Lab Yellow」でも間接的ながら体験できる。

「ステージでは80%くらいがインプロヴィゼーションなんだ。そして、ステージ上でも互いにコミュニュケーションを取れるようにしている。いわゆるバンドと同じように、演奏しながらそれぞれのボディーランゲージを読み取ることが重要なんだ」。

そう、「コブルストーン・ジャズは、異なるさまざまなものから形成され、人々が旅するための道筋となっている」という発言に象徴されるように、彼らのような姿勢から生まれるものこそ、個々がそれぞれのパートを担い、それが合わさってより大きなグルーヴになるという、いわば真っ当な〈バンド〉であり、〈音楽〉なのではないか。単にサウンドの傾向やテイストだけでなく、コブルストーン・ジャズこそ2010年に鳴らされるべき〈ジャズ〉であり、〈音楽〉なのだろう。

 

PROFILE/コブルストーン・ジャズ

ダニュエル・テイト、ティガー・デュラ、マシュー・ジョンソン、モールによるカナダのユニット。90年代からダンテ&デュラ名義で活動していたダニュエルとティガーに、テック~ミニマル界で注目を集めていたマシューが加わって、2000年代初頭に結成。2005年にモールを含むモダン・ディープ・レフト・クァルテットでEPを発表するが、モールの離脱によってトリオに戻る。2007年にリリースしたファースト・アルバム『23 Seconds』が世界的な評価を獲得。その後、SOIL&“PIMP”SESSIONSやKuniyuki Takahashiのリミックス、ライヴDVDの発表などを経てモールが再合流。このたびセカンド・アルバム『The Modern Deep Left Quartet』(!K7/OCTAVE)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年03月24日 17:55

更新: 2010年03月24日 18:04

ソース: bounce 319号 (2010年3月25日発行)

インタヴュー・文/石田靖博