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インタビュー

B.o.B 『B.o.B Presents The Adventures Of Bobby Ray』

 

「いまの気分は、エキサイティングで、たくさんの感謝の気持ちがあって、そしてまさにアドヴェンチャーをしてるような感覚。最近はその3つの感情が心のなかを占領してるフィーリングだね」。

シングル“Nothin' On You”に続いてアルバム『B.o.B Presents: The Adventures Of Bobby Ray』も全米チャートで1位を獲得するなど、前評判に違わぬ派手なデビューを飾ったB.o.B。さまざまな楽器を操るアトランタ出身のオルタナティヴ・ラッパー、ということで何かとアンドレ3000と比較されてきたこの男、やはりただ者ではなかった。

「楽器ができることのアドヴァンテージ? うーん、息をするのが楽になっている、と言ったらいいかな。より多くの自由が手に入るわけだから、もちろん大きな助けになってるよ。楽器を採り入れることで、より自由に呼吸ができている気がするんだ」。

T.I.とジム・ジョンシンという超強力な後ろ盾を得て作り上げられた『B.o.B Presents: The Adventures Of Bobby Ray』は、そんなB.o.Bのヴァーサタイルな音楽性とシンガー・ソングライター的資質に裏打ちされたヒップホップとメインストリーム・ポップとの刺激的なハイブリッドで埋め尽くされている。

「このタイトルはレコード契約をしてすぐに思いついたんだ。自分はたくさんのパーソナリティーと音楽スタイルを持っていて、それはまさにいろいろなキャラクターが出てくるアドヴェンチャーみたいなものだって考えてる。たくさん行きたいところがあって、自分の音楽がそんな場所に連れて行ってくれるんだ」。

ヴァンパイア・ウィークエンド“The Kids Don't Stand A Chance”のリメイク“The Kids”、リヴァース・クオモ自身とドクター・ルークの共作によるウィーザー“I'm Your Daddy”の続編的なパワー・ポップ“Magic”、T.I.とプレイボーイ・トレを迎えたATLヒップホップ史的にも重要なポッセ・カット“Bet I”──ハイライトだらけのアルバム中でも圧倒的な輝きを放っているのは、やはりブルーノ・マースの歌う清涼感溢れるメロディーが心地良いまっすぐなラヴソング“Nothin' On You”だ。

「“Nothin' On You”はブルーノ・マースがサビを書いた曲。彼が作ってきた歌詞とフロウを聴いて、自分なりにアイデアを広げていったんだ。俺の正直な気持ちが表れた曲になっていると思うよ。自分の気持ちを大声で叫んでるって感じかな。こんなにも早く大きな反響を得られるとは思ってなかったけどね」。

そして、“Nothin' On You”に続くセカンド・シングルとして早くも全米TOP5入りした“Airplanes”。ヘイリー・ウィリアムス(パラモア)の青臭くもエモーショナルなヴォーカルをフィーチャーしたこの曲のパート2では、B.o.Bのアイドルであるエミネムとの共演が実現している。

「エミネムとのコラボは起こるべくして起こったんだ。俺はもちろんだけど、彼も俺と組んでみたいと思ってたらしいからね。スタジオでのケミストリーは素晴らしかったよ。エムは俺の本質的な音楽性を際立たせてくれたと思う。彼はすごくダークな音が好きだけど、俺はメロディアスなほうに流れやすいんだよね。だから、俺たちは本気でふたつの世界を融合させる必要があったんだ」。

ドレイク、キッド・カディ、ワレイ、アッシャー・ロス、ニッキ・ミナージなど、新世代の台頭が著しい昨今のUSヒップホップ。そのなかでももっとも特異な個性といえるB.o.Bのブレイクにより、シーンはますますおもしろくなってきた。

「俺たちはこの業界に入るのがめちゃくちゃ大変だってことをよくわかってる世代なんだ。自分の居場所を確認しながら、いろいろと客観的に考えざるを得ないっていうかさ。だから、俺たち新しいアーティストの多くは冷静に状況を見て、常にフォーカスしていると思うよ」。

 

PROFILE/B.o.B

88年生まれ、ノースキャロライナ出身のラッパー。アトランタ東部のディケーターで育ち、少年時代からトランペットなどの楽器演奏に親しむ。13歳でラップを始め、従兄弟とグループを結成。高校卒業と同時にソロでの活動をスタートし、2006年にジム・ジョンシンの主宰するレベル・ロックと契約する。翌年にシングル“Haterz Everywhere”でデビュー。並行してT.I.主宰のグランド・ハッスルとも契約し、ミックステープの発表や客演を通じて名を広めていく。先行シングル“Nothin' On You”の全米No.1獲得で期待を集めるなか、ファースト・アルバム『B.o.B Presents The Adventures Of Bobby Ray』(Rebel Rock/Grand Hustle/Atlantic/ワーナー)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年05月19日 17:59

ソース: bounce 321号 (2010年5月25日発行)

インタヴュー・文/高橋芳朗