音楽的ルーツから透けて見えるBKBの魅力
ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズに象徴されるルーツ・ロック・レゲエ全般から、音楽的な面のみならず、その精神性やメッセージ性も含めて強くインスパイアされているということはメンバー自身が認めているところだが、ニュー・アルバム〈Wordlwize: Part 1〉はそのジャマイカ生まれのルーツ・ロック・レゲエから派生したUKの音楽(リントン・クウェシ・ジョンソンやデニス・ボーヴェル、スリッツやポップ・グループ、ニュー・エイジ・ステッパーズ、アスワド、ミスティ・イン・ルーツなど)との類似性も強く感じさせるものとなった。
圧倒的多数の弱者から富を永続的に搾取し続け、一部の巨大資本(時にそれは企業ではなく国家という体裁を取っている)だけが太り続けるシステム──レゲエで呼ぶところの〈バビロン・システム〉──に対して敢然とノーを宣言し、リリックやメロディー、リディムやグルーヴを武器に闘い続ける姿勢を明確にしながら、音楽的な可能性、豊かな創造力(ダブ、ポエトリー・リーディング、ダブ・サウンドシステムなどなど)を発揮し続けてきたルーツ・ロック・レゲエ戦士たちの系譜を現代に受け継ぐ一方で、フェラ・クティの強烈なアフロ・グルーヴ、サンタナの官能的な歓びの音楽、マイルス・デイヴィスのひとつの型に囚われない柔軟性などからも強くインスパイアされ、極めて自由度が高く、発想力、そして勇気にも富んだ独自のミクスチャー・サウンドを奏でる音楽集団、BKB。もっとたくさんの人がこのバンドの音楽に出会ってほしいと切に願う。
▼関連盤を紹介。
左から、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの76年作『Rastaman Vibration』(Tuff Gong/Island)、リントン・クウェシ・ジョンソンの80年作『LKJ In Dub』、スリッツの79年作『Cut』(共にIsland)、フェラ・クティ&アフリカ70の77年作『Zombie』(Barclay)、サンタナの70年作『Abraxas』、マイルス・デイヴィスの70年作『Bitches Brew』(共にColumbia)
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掲載: 2010年09月01日 17:59
更新: 2010年09月02日 21:56
ソース: bounce 324号 (2010年8月25日発行)
文/鈴木智彦