インタビュー

UNLIMITS 『蒼』

 

哀愁感とエネルギッシュなエモーショナル・ビートを併せ持つ〈懐メロコア〉バンドが、メジャー・デビュー作でネクスト・ドアを開いた!

 

 

誰もが頭をひねって考え続ける〈いいメロディー〉という概念のド真ん中をズバリと射抜く、大胆で鮮やかな手口に驚かされる。UNLIMITSのソングライティングを手掛ける清水葉子(ヴォーカル/ギター)の生み出すメロディーは、昭和の歌謡曲やニューミュージックをも彷彿とさせる、ノスタルジックなエモーションに溢れた美しくタイムレスな旋律が最大の魅力だ。

「特に意識したことはないんですけど、自分の心に残るものはそういったものが多いですね。私が小さい頃に父親がバンドを組んでいて、家にレコードが1000枚ぐらいあって、そこで染み付いたものなのかなと思ってます。でも、メロディーはベタベタなものが好きなんですけど、アレンジもベタベタにしちゃうと〈古っ、ダサっ〉てなっちゃう。それをいかにカッコ良く、いまの世代に訴えかけるように聴かせられるか、アレンジを意識してます」(清水)。

10代で〈AIR JAM〉に代表されるパンク、メロコアのムーヴメントにどっぷりハマリ、同時にJ-PopやUSハードコアなども好きで聴いていたという清水の強い個性を軸に、一聴して女性とは思えないほどパワフルな2ビートを得意とする郡島陽子(ドラムス/ヴォーカル)、ハード・ロック的なキャッチーなリフを得意とする大月義隆(ギター)、派手なモヒカン頭に似合わずゆるい和み系音楽を愛するという石島直和(ベース)から成るUNLIMITSは、インディーでの確かな反響を受けて、ミニ・アルバム『蒼』から満を持してメジャーへと活動の場を移すことになった。

「〈バンドでありたい〉という気持ちはすごくあります。僕らがハイスタやブルーハーツを見て憧れたように、自分たちもバンドをやってる以上そうなりたいと思うし、どうやったら自分たちらしく立っていられるのかは常に考えてますね」(大月)。

『蒼』に収められた全6曲は、UNLIMITSのトレードマークと言えるノスタルジックな歌謡メロディーと強烈なビートで突っ走る“蒼”と“8”の2曲をオープニングとエンディングに配し、真ん中の4曲ではこれまでにない新しいトライも。彼らにしては珍しく非常に明るいコード感とメルヘンチックな歌詞を持つ“ファンタジーファンタジー”や、「場末のスナックがよく似合う(笑)」(清水)という泣ける和風メロディー満載の“月光”という、まったく逆の方向に振り切った曲があるかと思えば、ダンス・ビートの深いグルーヴをロック的に消化した“シャットアウト”があり、そのうち清水が初めてピアノを弾く曲も2曲ある。

「紙一重なところがいいところだと思うんですよね。UNLIMITSのメロディーにはいい意味での古さがあるから、そこをアレンジでどう活かせるかがいちばん怖いし、逆にいちばん魅力的にもなれるところなのかなと思います」(大月)。

「今回特に、自分たちとしても新しいアレンジで曲を揃えることができたので、6曲全部通して聴いてほしいです」(清水)。

さらに「常に思春期みたいな感じがある」(清水)という、激しい衝動と深い内省が交錯するギリギリの切迫感に溢れた歌詞の世界観も、メロディーの良さをさらに増幅させる大切な要素だ。〈がんばれ〉〈大丈夫だ〉といった言葉はひと言も出てこないが、すべて聴き終えたあとのじんわりとした感動のなかには、聴き手に前向きなエネルギーを与える何かが確かに含まれている。

「誰かに〈元気出せよ〉って言うんじゃなくて、ただ隣に座ってるっていう感覚なんですよ、UNLIMITSの楽曲は。ツライ時には、ただいっしょにいるよっていうだけですごく心強かったりするし、その感覚が届いたらとても嬉しいです」(清水)。

 

▼関連盤を紹介。

UNLIMITSが参加したゲット・アップ・キッズのトリビュート盤『TRIBUTE TO GET UP KIDS』(EVOL)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年09月08日 17:17

更新: 2010年09月08日 17:18

ソース: bounce 324号 (2010年8月25日発行)

インタヴュー・文/宮本英夫

記事ナビ