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インタビュー

MUSICMAN・桑田佳祐が丸呑みしたり、憧れたり、影響を受けているアーティスト/音楽とは……?

 

10代の頃からありとあらゆる洋楽を聴き漁り、本人いわく「咀嚼じゃなく丸呑み」するように採り入れてきた桑田佳祐。作り手という意識よりもいちリスナーとして楽しんで真似してみるような無邪気な目線が根底にあるからこそ、闇雲に新しい音楽を摂取しなくても、この人の音楽はいつまでも鮮度の高い状態にあるのだろう。実際、ティーンエイジャーの頃に夢中になった作品を、いまも家で頻繁に聴いているという。例えばビートルズ。シングル曲でもある“本当は怖い愛とロマンス”はビートルズの“Lady Madonna”を下地にしたような、ピアノとサックスがウィットに溢れたリフを重ね、〈ファファファファ〉コーラスも小粋なチューンだ。

「いまになってもう一度ビートルズに帰ってきちゃった。ただ、90年代にはちょうど〈Anthology〉とかがリリースされた頃でもあったから、自分でもエンジニアさんに教えられながら音作りを学んだりもしたんですけど、結局は彼らの曲そのものなんですよね」。

あるいは70年代のUS南部系バンドもいまなお良いお手本。だが、例えばリトル・フィートもレオン・ラッセルも実際は南部出身ではない。東京で結成されたのに〈サザンオールスターズ〉と名付けられたセンスに通じるものもある感じが……。

「リトル・フィートなんてホントに昔はよく真似したなあって恥ずかしくなりますね(笑)。改めてリトル・フィートをCDなんかで聴くと、〈あ、これもそうだし、この曲もそうだ〉ってびっくりしますよ(笑)」。

初期ボブ・ディラン風の“それ行けベイビー!!”、ドクター・ジョンやアラン・トゥーサンへのオマージュたっぷりの“OSAKA LADY BLUES ~大阪レディ・ブルース~”なども〈丸呑み感覚〉が基本。好きなアーティストの話題に触れると「1月にアラン・トゥーサンって来日してたの? へえ~、いまどんな感じなんだろうね」と子供のような表情を見せる。

「ニール・ヤング、ボブ・ディラン、ポール・マッカートニー、エリック・クラプトン……かなわないなあと思うんですよ。大好きなんですけどね。ただ、僕はもっと歌謡曲というか大衆的な音楽を作り続けていきたいという思いもあって。あと、映画を観ていると、〈このくらいの音圧がないと画には勝てないんだな〉とかって思うんですよ。そういう意味では映画から影響を受けることも多いです。ひとりでDVDを観てるとわからないこともあるんで、映画館で大勢の人たちと観ることが好きですね。なかでも去年の『NINE』なんかはサントラも好きでした」。

 

▼文中に登場したアーティストの作品を一部紹介。

左から、ビートルズの編集盤『The Beatles Anthology: 2』(Apple)、リトル・フィートのベスト盤『The Best Of Little Feat』(Rhino)、レオン・ラッセルのベスト盤『Retrospective』(Capitol)、ボブ・ディラン&ザ・バンドの75年作『The Basement Tapes』(Columbia)、ドクター・ジョンの72年作『Dr.John's Gumbo』(Atlantic)、アラン・トゥーサンの2009年作『The Bright Mississippi』(Nonesuch)、ニール・ヤングの2010年作『Le Noise』(Reprise)、ポール・マッカートニーの2007年作『Memory Almost Full』(Hear Music)、2010年のサントラ『Nine』(Geffen)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年02月16日 18:01

更新: 2011年04月06日 20:21

ソース: bounce 329号 (2011年2月25日発行)

文/岡村詩野

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