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インタビュー

RICKY MARTIN 『Musica + Alma + Sexo』

 

率直に自分自身をさらけ出して称賛を浴びたリッキー・マーティン。近年では最高の成功を獲得しつつある新作は、己の表現に改めて深く向き合ったポップな会心作だ!

 

リッキー・マーティンの最新シングル“The Best Thing About Me Is You”はリラックスしたレゲエ調チューンで、これまでの彼の代表曲とはガラリと雰囲気を変えている——とは言ったものの、彼が世界規模のトップスターとして君臨していたのはもう10年以上前のこと。現在の若いリスナーには、案外親しみのない名前かもしれない。98年FIFAワールドカップのテーマソングに選ばれたサンバ調の“La Copa De La Vida (The Cup Of Life)”、日本でも郷ひろみのカヴァーでお馴染みとなったその翌年の“Livin' La Vida Loca”が世界的なヒットとなった彼は、ジェニファー・ロペスやシャキーラと共に近年最大のラテン・ポップ旋風を巻き起こしたアーティストだ。2000年代に入ってからはスペイン語/英語それぞれのベスト盤やライヴ盤も含めて計8枚のアルバムをリリースしているが、2005年の『Life』以降はすっかり露出が少なくなっていたのも事実である。

「そうだね、でもこの数年でいろいろやりたいと思ってたことが実現できたんだ。長い旅に出たりしてね。バックパックを背負ってインドやタイ、カンボジアにも行ったんだ。いろんな感動に出会えるすごく貴重な体験になったよ」。

そして2008年には代理出産で双子を授かり、昨年の春先には長年の噂に終止符を打つべくカミングアウト。11月にはそれらの経験も含めて半生を振り返る自伝「Me」を出版し、「書くことで、すごく気持ちが浄化された」という。ニュー・アルバム『Musica + Alma + Sexo』が全体的に希望に溢れたトーンになっているのは、当然そういったプロセスがあったからこそ、というわけだ。本人は「制作にはまっさらな気持ちで取りかかった」と語る。

「自己探索しながら、素直な感情をそのまま音にしたかった、って言えばいいかな。踊る時は踊って、ロマンティックな気分の時は思いっきりロマンティックになりたかったし、考えに耽る時や哀しい気持ちがあったらそれをストレートに表現してもいいって思ってた。そういう感情も人生の一部だからね」。

今回の新作では、前述の2大ヒットや“She Bangs”(2000年)などを手掛けたデズモンド・チャイルドが実に11年ぶりにプロデュース参加しているのも注目すべき点だ。

「彼は一家揃って僕のホームスタジオに来て、生活を共にしてくれたんだ(笑)。彼が来る前に準備してた曲は結局ほとんど使わなかったんだけど、こうしてすごくアップテンポで明るいアルバムが完成できたのは彼のおかげさ」。

“The Best Thing About Me Is You”に関して、リッキーは「まさかこの曲がシングルになるとは思ってなかったけど、いい反響をもらえてるから嬉しい」と語る。

「いちばん思い入れがあるのは“Mas”(スペイン語で〈もっと〉の意)って曲で、そこでは〈人生にもっと求めよう〉って言ってるんだ。いまの人生は幸せだし、毎日感謝の気持ちいっぱいで生活してるけど、それでも何か〈もっと〉っていう、より高い目標や希望を持っていいと思うんだ。誰だってそうするべきだと思う。だからこうやってこれまでとちょっと違うムードの曲を皆に聴かせて楽しんでもらえるなら、それもすごく素敵なことだよね。このアルバムを聴く人には、そうやってそれぞれがもっと自分自身の可能性を信じて生きていこう、ってメッセージを届けたいな」。

 

▼関連盤を紹介。

左から、リッキー・マーティンの英語ベスト盤『The Best Of Ricky Martin』(Columbia)、“The Best Thing About Me Is You”に客演したジョス・ストーンの2009年作『Colour Me Free!』(Virgin)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年04月22日 13:36

更新: 2011年04月22日 13:36

ソース: bounce 330号 (2011年3月25日発行)

インタヴュー・文/石川愛子