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インタビュー

INTERVIEW(3)――ギリギリのバランス

 

ギリギリのバランス

 

アナ_A3

 

――今回のアルバムには、どこかノスタルジックなムードがありますよね。

大内・大久保「はい」

――それでいて未来的でもあって。

大内「わかります」

――これはいい意味で言うんですけど、アナはエレクトリックな要素はあっても、まずハイファイな雰囲気にはならないんだな、って

大内「ああ~、それは絶対ないですね。人間的に(笑)。歌詞の内容とかもやっぱ、人間臭いもんね(笑)」

大久保「より日本的になったな(笑)。歌詞は変わったと思いますよ。過去3作はずっと同じこと――同じところから見た景色を書いてたっていうか、ずっとおんなじような精神状態で書いてて、いい加減、変えたいなと思っても実際の体験とか思いから歌詞を書いたりするので、そう簡単にも変わらずで。で、今回は環境も変わったし、さすがに歌詞にもヴァリエーションがあるだろうなと思って、いざ出来上がって見てみたら……すっごい孤独感に溢れてて(笑)」

――(笑)そんなに孤独だったんですか?

大久保「すごい孤独でした(笑)」

大内「初めての一人暮らしで(笑)」

大久保「(笑)でもそういう世界観は、いままであんまり書いてなかった」

――自然にそういう方向に?

大久保「そうですね。歌詞はいつもがんばって書いてるんですけど、今回は特にSECOND ROYALから出る初の日本語の作品だし、一般的にも英語のバンドが多い、っていう印象のレーベルだから、そのなかであえて日本語でやる以上は、ちゃんと勝負できるようにしたいなと思って、いままで以上っていうか、より詰めて書きましたね」

――今回のアルバムは、すごく良質な日本語のポップス作品だと思うんですね。なんだか最初のほうでお話したことと逆行してしまうかもしれないんですけど、私が本作を聴いて思い出した作品というのが、コーネリアスの『THE FIRST QUESTION AWARD』で。

大久保「おお~」

――エレクトリックな要素も、現行のダンス・ミュージックとして機能する楽曲もあるんですが、そのグルーヴ感からは、どこかソウルやファンクの匂いがするというか。その落とし込み方に、渋谷系の雰囲気が残っているな、と。

大久保「そうですね。やっぱり小沢健二さんとかも大好きだし、そう言ってもらえるのは嬉しいですね。ちょっと話が戻るんですけど、Rufusの上田くんといちばん最初にアルバムのイメージを話し合ってたときに出たのは、惜しいんですけど(笑)、『69/96』で。ひとつあとなんですよね(笑)」

――ああ~、『THE FIRST QUESTION AWARD』から『FANTASMA』の間、という感じはしますよね。

大久保「うん。あと『69/96』って、曲のヴァリエーションもすごいじゃないですか。だからイメージとして、あれぐらい何でもかんでもやって、ゴチャゴチャしたものにしようか、っていう話はしてましたね。いままでは、ビートの感じも10曲あればそのなかで似ちゃってる曲があったりしたんですけど、それを解消したい、っていうことは、上田くんにお願いしてました」

――それはリズムの面だけですか?

大久保「リズムが主にですけど、アレンジも、音色も、ですね」

――今作は、エレクトロ・ポップなサウンドのなかに、先ほど話したソウルやファンク以外にもAORやソフト・ロックとか……そういう音楽性が溶け込んでいると思うんですよね。

大久保「はい。たぶん、そういうのがいちばん好きだし、なんか、よくエレポップ・バンドとか……ひどいときはテクノ・ポップ・バンドとか言われるんですけど(笑)、自分たちとしては、そういうことをやろうと思ったことは一度もなくて。なぜかわからないんですけど、デビューした当初からエレポップ、エレポップ、ってエラい言われてて」

大内「ピコピコ系とかね(笑)」

大久保「なんか、単純にシンセとかの機械を、もっと単純に言えば電源をすごい使ってたんで、〈やたらと電源が多い、ポップなバンド〉っていう意味でのエレポップ・バンドではあるかもしれませんけど(笑)。だから、ホントに根底にあるのはそういうソウルだとか……もともといちばん影響を受けてるのはスチャダラパーとかだし、そこからネタものを探したりとかずっとやってて。で、今回は僕がやっといまのインディーズとか、海外ものに興味を持ったところで、そういう音が入ってきて、ってことだと思います」

――なので、エレクトリックな音もすごく聴こえてくるんですけど、やっぱりどこか90年代の渋谷的な……あの、以前から変化がないという意味で言っているわけではないんですけども。

大内「わかります、わかります。言いたいことは、すっごく(笑)」

大久保「すごい、いいバランスが出たと思うんですよ」

――そうですね。本作のリリース前に出たレーベル・コンピ『SECOND ROYAL VOL.6』で“TEI”を初めて聴いたときに思ったのは、まさにそこで。不思議な時代感があるというか。

大久保「ああ、特に“TEI”とかはそうなんですけど、やっぱり上田くんと話してたのは、まあSECOND ROYALから出すってことで変化も要るし、かと言って、完全にいまの海外インディーに寄せることによって、いままで3年間待っててくれた人が〈完全に違うとこにいったな〉って思うようなものは避けたい、っていうことで。どっちもやっぱりアナだから、変わったなっていうギリギリのバランスをすごい考えて、〈これはやりすぎだ〉とか〈もうちょっと戻そう〉とか、そういう部分にすごく時間をかけましたね。“TEI”とかはホントに最初に出したから、いちばんいいバランスを取るように作りました」

 

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掲載: 2011年04月27日 18:00

インタヴュー・文/土田真弓

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