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インタビュー

MONOBRIGHT 『ACME』

 

大胆にも程がある新メンバーの加入を経て、ついに新生MONOBRIGHTの本領を発揮した新作『ACME』が完成! メンバーが選ぶ〈ACME盤〉と併せて楽しんで!

 

 

乗っ取られるとかそういう話じゃない

昨年の2月に〈DO10!! 攻約宣言!〉を掲げて以来、文字通り怒涛のリリースとライヴを続けてきたMONOBRIGHT。11月には元BEAT CRUSADERSのヒダカトオルと驚きの結婚(=加入)を果たし、今年に入ってからはミニ・アルバム『淫ビテーションe.p.』と両A面シングル『COME TOGETHER/DANCING BABE』を立て続けにリリース。そしてついに、〈絶頂〉を意味する『ACME』と名付けられたフル・アルバムが到着した。〈エモい〉〈濃厚〉と予告されていた通り、ヒダカによって男気を注入されたバンドのパンク精神が爆発している。

「もともとMONOBRIGHTは中学の時に〈AIR JAM〉にぶつかってたんですけど、結局20歳を越えてからニューウェイヴに偏って、そっちにチャレンジしようってずっとやってきたんで、パンクっぽいのはやるにやれない部分があったというか。そこの扉をヒダカさんに開いてもらいました」(桃野陽介、ヴォーカル/ギター/キーボード)。

「DefSTARにMONOBRIGHTが入った時は、バンドものがBEAT CRUSADERSとMONOBRIGHTしかいなかったんで、プライヴェートでずっと仲良かったんですよ。デビュー前のライヴを観に行ったり、CDを貸し借りしたりとかしていて。だから、すでにこの人たちはAIR JAM世代で、エモいものを持ってるってわかってました」(ヒダカトオル、ヴォーカル/ギター/キーボード)。

これまでの彼らは、その洋楽マニアぶりが、小器用なんだけどもうひとつインパクトに欠ける……という印象に繋がっていた感も否めない。しかし本作では、同名のアルバムをリリースしていたバッド・レリジョン直系のハードコア・パンク“NO CONTROL”や、マイ・ブラディ・ヴァレンタインに並ぶ代表的なシューゲイザー・バンドの名前をそのまま冠した“スロウダイヴ”など、いつになく直球で剥き出しの楽曲が並んでいる。

「田舎のイイ子たちなんで(笑)、メジャーのギター・バンドとしてちゃんとコーティングされたものを作らなくちゃいけないって気を遣っちゃってたんですよね。音楽の専門(学校)を出てるし、良くも悪くも最初からビジネスライクにバンドを捉えてた。だから〈遠慮してるな〉って感じがすごくしてたんですよ。でもMCだけは遠慮してないから、ちぐはぐになってたりして(笑)」(ヒダカ)。

「MONOBRIGHTってジャンルに対して気を遣うバンドだったなと思って。例えば、メロコアをやりたいと思っても、ちょっとふざけて丸々2ビートはやらないとか、シューゲイザーをやるにしても、ちょっと歪みを減らすとか。僕らのなかで弾けてると思ってた部分が、全然そうじゃなかった。それが今回でホントに解放されましたね」(桃野)。

そしてMONOBRIGHTはヒダカトオルに乗っ取られてパンク・バンドになったのかと言えば、もちろん決してそんなことはない。これまで通りニューウェイヴやポスト・パンクを独自に消化したポップなナンバーは健在だし、“夜明けのバル”のような内省的なナンバーは、実験的な作品だった前作『ADVENTURE』の延長線上にあると言える。4人での経験を踏まえたうえで、5人となった現在のMONOBRIGHTがいるのだ。

「結局〈AIR JAM〉自体もすごくいろんなバンドがいたじゃないですか。WRENCHもいればBACK DROP BOMBもいたし、SCAFULL KINGもいて、もともと振り幅を持ってるシーンだったんですよね。それを俺は横で見てたので、その時の良さと、現代のニューウェイヴとかディスコ・パンクの良さを、ちゃんと合体させられると思ってたんですよね。だから『淫ビテーションe.p.』のほうが俺っぽいと思いますよ。アルバムでMONOBRIGHTの持ってる陽性と陰性をちゃんと出せたんで、俺が入っての第1弾はわざと俺っぽくしちゃうっていうギャグですよね。〈乗っ取られちゃった〉っていう画をわざと見せるっていう。『ACME』を聴いてもらえば、乗っ取られるとかそういう話じゃないっていうのをわかってもらえると思うんです」(ヒダカ)。

 

MONOBRIGHTの独自性

ヒダカの経験と知識によって、バンドの持つ〈洋楽的な魅力〉がより明確になっているのは間違いない。しかし、その洋楽的な魅力というのは日本のメジャーな音楽シーンにおいてなかなか伝わりづらい部分であることもまた事実である。果たして、MONOBRIGHTに勝算はあるのだろうか?

「唯一歌詞だけはまったく手直ししてないんですよ。昔から変なこと歌ってるなとは思ってて(笑)、J-Popと並んでも恥ずかしくはないんだけど、J-Popの規範にはいい意味で入らないっていう。タイトルもそうですよ、“淫ピーDANCE”とか普通付けないもん(笑)」(ヒダカ)。

「いやらしく歌えてる同世代っていないんですよ。みんなカッコイイんで、そうじゃないのをやりたくて。桑田さん然り、清志郎さん然り、エロい。そういうのは日本の音楽として絶対やりたい」(桃野)。

「80年代の日本のロックの流れをちゃんと汲んでて、そこが逆に独自性になってるというか。いまはみんなちょっとオブラートに包んで前向きな歌詞に変えちゃうんだけど、こっちは全然前向きじゃないし(笑)。それがおもしろいと思うんですよね」(ヒダカ)。

新婚ホヤホヤながら早くもたくさんの元気な子供を生み落とし、ハネムーン・ツアーもひと段落したものの、夏には全国ツアーに出発……とますます意気が上がる彼ら。しかも、今後の家族計画までしっかり頭にあるという。

「僕らがめざしてたバンド像って、ビートルズやXTCみたいにソングライターが2人いたり、誰が歌うかわかんないってバンドなんで、今回のアルバムでそういう方向性を見せられたと思います。今後はもっとヒダカさんの楽曲が増えたり、他のメンバーが曲を書いたり、もしかしたらメインを歌うかもしれないし」(桃野)。

「そういう意味で、ビートルズの〈White Album〉っぽいのができるんじゃないかって。ジョージもリンゴも歌っていて、それが結構いいっていうあの感じですね」(ヒダカ)。

 

▼MONOBRIGHTの作品を紹介。

左から、2007年のミニ・アルバム『monobright zero』(USI bright)、2007年作『monobright one』、2008年のミニ・アルバム『あの透明感と少年』、2009年作『monobright two』、2010年作『ADVENTURE』、2011年のミニ・アルバム『淫ビテーションe.p.』、新作の先行シングル『COME TOGETHER/DANCING BABE』(すべてDefSTAR)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年05月04日 18:01

ソース: bounce 331号 (2011年4月25日発行)

インタヴュー・文/金子厚武