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インタビュー

Sofia Coppola

ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞! ソフィア・コッポラの新境地
〜映画『SOMEWHERE』 ソフィア・コッポラ監督インタヴュー

女性らしい繊細さとファッショナブルなセンスで、ハリウッドに新しい息吹を吹きこんだソフィア・コッポラ。初めて男性を主人公にした最新作『SOMEWHERE』は、ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞するなど、彼女にとっては記念すべき作品になった。スティーヴン・ドーフが演じる主人公は、人気俳優のジョニー・マルコ。ホテル暮らしを送るジョニーのもとに、娘のクレオがやって来るところから物語は始まる。


「最初にジョニー・マルコというキャラクターを思いついたんです。もし、いつも女性達に取り囲まれている映画スターに娘がいたら? その娘が彼の生活に飛び込んできたら、彼はどんなふうに反応するんだろう。そんな風に考えながら物語を膨らませていきました」

父と娘といえば、どうしてもフランシス・コッポラとソフィアとのことを連想するが、ソフィアはそれをキッパリとそれを否定する。

「同じ父と娘であっても、ジョニーとクレオの関係と私と父の関係はまったく違います。プライベートなことが反映されているとしたら、それは撮影中に私に娘が生まれたことです。そのおかげで、これまでとは違った角度で親子の関係を見つめることができました」

ジョニーとクレオが共に暮らす場所は、ハリウッドにある伝説的なホテル、シャトー・マーモント。ホテルというイカダにのって人生を漂流しているジョニーに対して、クレオは「料理をしたり、自分ができる限りのことをしてホテルを我が家のようにしようと」する。そんな二人の生活が淡々と描かれていくが、撮影時には「観客に二人の生活を間近に見ているような感覚を持ってもらうために」スタッフの人数を最小限に抑えて、現場が親密な雰囲気になるように心掛けたとか。さらにサントラを担当したフェニックスはミニマルなインストを提供し、ソフィアの作品にしては劇中に流れる楽曲が少ないのも映画にプライベートな感覚をもたらしている。

「ジョニーが人生に抱いている空虚さを描きたかったので、できる限り音楽は使わないで静寂を大切にしました。音楽以外でもシンプルであることを心掛けています。例えばカメラは長回しで、編集も細かくしはない。そして、通常は割愛されるようなシーン、例えば顔を洗うシーンとか、そういう日常の些細なシーンも入れるようにしているんです」

これまで〈ガーリー〉というキーワードで紹介されることが多かったソフィアだが、それはつまり日常への細やかな視線/感受性だったことが本作を観ればよくわかる。「私が映画が好きな理由のひとつは、言葉を使わなくても映像で思いを伝えることができること」と語るソフィア。その可能性を追求したともいえる本作には、彼女の映像作家としての強い決意が秘められている。

 

映画『SOMEWHERE』監督・脚本・製作:ソフィア・コッポラ 音楽:フェニックス
出演:スティーヴン・ドーフ/エル・ファニング/クリス・ポンティアス
配給:東北新社(2010年   アメリカ)
◎2011年 4/2(土)より新宿ピカデリー他にて全国ロードショー
©2010-Somewhere LLC
http://www.somewhere-movie.jp

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年05月10日 18:44

更新: 2011年05月10日 19:34

ソース: intoxicate vol.90 (2011年2月20日発行)

interview & text:村尾泰郎