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インタビュー

RYUZO 『HAZARD』

 

いま危機はどこにある? 時代の流れにシンクロした言葉たちとハードコアの真髄を極めたビートがふたたび届けられた。このヤバさはR指定、あるいはそれ以上の……

 

Anarchy、RYUZOら京都出身のアーティストたちのリリースを通して着実に成長を続けてきたR-RATED。昨年はUSの重鎮プロデューサーであるスキー・ビーツが仕掛けたプロジェクト『24 Hour Karate School』の日本版『24 HOUR KARATE SCHOOL JAPAN』で、国内を代表するMCたちが一堂に会する日本語ラップのモニュメント的作品を作り上げ、名実共に現在の日本のヒップホップを代表するレーベルとなった。主宰者のRYUZOは、昨年の〈24HKSJ〉、そして昨年の大晦日にスキー・ビーツと彼のバンド=センセイズを招聘して開催されたリリース・パーティーを振り返ってこう語る。

「ヒップホップは死んでないな、って。あのプロジェクトで俺の無茶ぶりに賛同してくれた人たち……そういう人たちがまだ日本のヒップホップにいて、ヒップホップについて考えてくれてるっていう。得たものとしてはレーベルとしての知名度かな。やっぱりいままではどうしても〈Anarchyありきのレーベル〉だって思われてたと思うし。レーベルとしての力というか、Anarchyのアーティスト力と俺たちのレーベルとしての力でこれまでやってきてた、っていうのを示せた」。

そして2011年、R-RATED発のオリジナル ・アルバムとしては一発目のリリースとなるのが、レーベル主宰者にして京都ヒップホップ・シーンのパイオニアでもあるボス・RYUZO自身の3年ぶりとなるアルバム『HAZARD』だ。自動車のハザード・ランプを連想させるアルバム・タイトルについて彼自身は「〈警告〉の意味でもあるし、良い意味で〈ヤバい〉っていうふうに捉える人もいる。とりあえず〈危険なアルバム〉ってこと」と説明する。実際に今作は、ここ数年の彼がMCとして、裏方として、夜な夜なクラブに繰り出す遊び人として見てきた、日本のヒップホップ・シーンに対する危機感や、権力者たちに対する憤りが詰め込まれ、一方でストリートにい続ける者のみが語れるブルースも込められた、ハードコア・ラップの王道を行く濃密な仕上がりだ。

「ここ最近の日本のヒップホップでいちばん感じるのは、みんな売れようとしてアルバムを作ってるっていうこと。俺らはそうじゃない。良い音楽を作ったろって思ってやってる。そこがR-RATEDと他のレーベルの根本的な違いやと思う。だから、今回も〈売れるモンとか考えないでホンマのヒップホップを作る〉って思ってアルバムを作りました。俺は〈吠えまくったる〉ってスタンスだし、R-RATED自体がそういうスタンス」。

東日本大震災の影響は音楽業界でも深刻だが、そんな状況だからこそ彼は反骨心の強い自分たちの音楽の力強さを強調する。

「いまの国の状況も全部バビロンじゃないですか。だからアルバムのリリース日を遅らせなかったんですよ。俺たちはアンダーグラウンドの音楽をやっているから、自分たちがクリエイトしたものは自分たちでコントロールしてる。だからこそ、いまやらなあかんな、って思ったんです」。

リード曲の“The R”で彼は〈Fuckニセモン、Fuckバビロン!〉と叫ぶ。このストレートなハードコアさは文字通り〈芯の固さ〉がなければ成り立たない。こんな時期だからこそ、レベル・ミュージックとしてのヒップホップを体現した『HAZARD』に耳を傾けてみてほしい。

 

▼『HAZARD』参加アーティストの関連盤を一部紹介。

左から、OZROSAURUSの新曲を収めたDJ SN-Zの最新ミックスCD『HARD PACK』、DABOの2010年作『HIGH-FIVE』(共にEMI Music Japan)、SUIKENの2010年作『DEVELOPMENT』(コロムビア)、福原タカヨシの2010年作『Qualia』(KSR)、RUEEDの2010年作『BLOC, TOWN, CITY』(MAGNUM)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年05月26日 14:34

更新: 2011年05月26日 14:35

ソース: bounce 331号 (2011年4月25日発行)

インタヴュー・文/伊藤雄介