インタビュー

『DAWNS』から垣間見れるmitoの現在のモード

 

mitoはリスナーとして、聴く音楽の幅が広いことで有名だ。その自由なスタンスによって得られる情報が、彼の作品や演奏に反映されているのは間違いない。とりわけポスト・ロック~ポスト・クラシカル指向は年々高まっており、今作における全体的な方向性の面では、公私共に親しいアダム・ピアース(マイス・パレード)の近年の作風と共振している印象だ。例えば“parallel of delusion”などはフライング・ロータスやハドソン・モホークといった昨今のワープを代表するアーティストのフィジカルなのにスマートな曲展開から影響を受けているようだし、湿り気を含んだ音の質感はトム・ヨークやレディオヘッドの作品にも近い。

また、演奏面においては、“my dusk”で聴ける、スウェーデンのいまは亡きコンテンポラリー系のジャズ・トリオであるE.S.T.にも通じる洒脱な躍動感がプレイヤビリティーの高さを伝えてくれるし、技巧的なアンサンブルはヘラや初期バトルスといったマス・ロック系にも負けないスキルに裏打ちされている。そして、作品後半で感じ取れる静謐でクラシカルな雰囲気は坂本龍一や渋谷慶一郎あたりへのオマージュのようでもあり——断面は複雑でエクレクティックでも、耳へ届く時にはキャッチーという構造になっているのは、流石、木村カエラなどに曲提供もしているmitoならではだ。

 

▼関連盤を紹介。

左から、マイス・パレードの2010年作『What It Means To Be Left-Handed』(Fatcat)、フライング・ロータスの2010年作『Cosmogramma』(Warp)、レディオヘッドの2011年作『The King Of Limbs』(_Xurbia_Xendless)、E.S.T.のベスト盤『Retrospective: The Very Best Of E.S.T.』(Act)、ヘラの2007年作『There's No 666 In Outer Space』(Ipecac)、渋谷慶一郎の2011年作『ATAK015 for maria』(ATAK)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年05月27日 23:38

更新: 2011年05月27日 23:38

ソース: bounce 332号 (2011年5月25日発行)

文/岡村詩野