インタビュー

Wienners 『W』



これまでのパワープレイ路線を一旦フラットにし、バンドのサウンドを見つめ直した新作。奥行きを増した楽曲はかなり魅力的です!



Wienners_A



パンク~ハードコア、テクノ、ヒップホップ、レゲエなどさまざまなジャンルを横断した高速ナンバーでリスナーの度肝を抜いたWiennersが、早くも大きな転機を迎えている。従来通りの速い楽曲と、よりスケール感のあるナンバーという現在の彼らが持つ二面性を提示した今回のミニ・アルバム『W』の背景には、曲作りに対する大きな意識改革があった。

これまでは完璧主義だったというか、〈できないことはやらない〉っていうスタンスだったんですけど、今回は音で演奏してる人のキャラクターがわかるようなものにしたいと思ったんです。できてない部分も含め、全部さらけ出そうと」(玉屋2060%、ヴォーカル/ギター:以下同)。

そもそも本作は、当初「ファストでありながら、壮大でもある」楽曲をめざしたもののなかなか思うように曲ができず、だったら現状報告として、その2つを分けてそのまま見せてしまおうというアイデアから生まれたアルバムなのだという。そして、その考えに至るきっかけとなったのが、〈眠れないの〉と玉屋が心情を吐露した“午前6時”だ。

「何十曲、何百曲とボツにしてた時に、友達から〈一回普通に歌ってみたら?〉って言われたんです。それで、まさに午前6時ぐらいに、ホントため息みたいな感じで出てきたのがこの曲で。こういう歌は桑田佳祐ぐらい(のキャリア)になってから歌うものだと思ってたんで、まさかこんなに早く歌うことになるとは……って感じなんですけど(笑)、でも自分をさらけ出せたことは自信にもなって、それからアルバムに向けて動きはじめたんです」。

“午前6時”はバンドの紅一点・MAX(キーボード/サンプラー)によってリミックスされ、“午前6時ブランニューアーバンタイプ”として配信限定で発表されているが、彼女はアルバムの冒頭を飾る“レスキューレンジャー”でもメイン・ヴォーカルを務めるなど、前作以上にそのキュートな存在感を発揮している。

「アニソンとかももクロ、MOSAIC.WAVっていうアキバのポップ・ユニットとかを新鮮に感じていた影響は出てると思います。曲が全然できない頃はいま思うとアイデアやユーモアが欠けていて、ももクロとかを聴いた時に〈この曲作ってる人チョー楽しそうだな〉って思ったのはデカかったですね」。

未完成な部分も含め、メンバーの個性をそのまま音に反映させることで、バンド最大の危機を乗り越えたWienners。次の作品こそ「ファストでありながら、壮大でもある」楽曲をめざす。

「これを出したことで気が楽になったので、もっと先に進めそうな気がしてます。いままで漠然としか見えてなかったのが、やっと〈あと何キロ〉っていう距離で見えてきたっていうぐらいなんですけど(笑)」。


▼Wiennersの2010年作『CULT POP JAPAN』(wns)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年10月31日 21:30

更新: 2011年10月31日 21:30

ソース: bounce 337号(2011年10月25日発行号)

インタビュー・文/金子厚武