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インタビュー

LONG REVIEW――ソノダバンド 『疾走(はしれ はしれ)』



ソノダバンド_J170

〈インストは売れない〉としたり顔で言う人がどういう感覚でどこを見てるのかは知らないが、少なくとも間違いなく言えるのは、2000年代の日本のロック・シーンにおいては、インスト・バンドの戦える〈場〉が飛躍的に増えたということだ。フェスがあたりまえに全国各地で行われるようになり、多くのバンドにとって〈ライヴで作り上げる空気の速効性〉の重要度が大きく増した。例えばジャム・ロックのSPECIAL OTHERS、ポスト・ロックにルーツを持つ残響レコード所属のte’やmudy on the 昨晩、ピアノとカホンでストリートから叩き上げた→ Pia-no-jaC ←など、それぞれが自身のスタイルでしのぎを削っている。

そういった状況のなかでソノダバンドが掲げたのは、ヴァイオリンとチェロに〈歌〉のパートを任せたバンドとしてのあり方。アンサンブルの妙味やビートの享楽性というよりは、あくまでもメロディーの疾走感で引っ張っていく方向性だ。『ルネサンス』でもその片鱗は見えていたが、今作でそれがいよいよ開花している。“はしれ、はしれ”や“上陸セヨ”などのアッパーに聴き手を攻め立てるような楽曲が光っており、上述の例だと3本のギター荒れ狂うmudy on the 昨晩のスタイルがいちばん近いかも。

アルバムのなかでもっともJ-Pop的な〈歌〉の強さを感じさせるのが1曲目の“sayonara(さざ波に寄せて)”。シンセのキラキラ感はフジファブリックの『STARS』あたりともリンクする感覚だ。一方で、リーダーである園田涼のピアノを真ん中に据えた“Manic Strees”や“素晴らしき朝帰り”は、もともと葉加瀬太郎のカヴァー・バンドとして始まったというルーツも垣間見せる。

人懐っこく、言葉なくして歌う本作。そんな彼らの変化は、インスト・バンドの豊穣さを示すものだと思う。



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掲載: 2011年11月09日 18:01

更新: 2011年11月09日 18:01

文/柴 那典