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インタビュー

DJ FOOD 『The Search Engine』



あのストリクトリー・ケヴが11年ぶりのアーティスト・アルバムを引っ提げて帰還! 正真正銘のソリッド・スティールはここにあるぜ!

 

 

昨年に設立20周年を迎えたロンドンのインディー・レーベル=ニンジャ・チューンは、ここ最近、ふたたび波に乗りはじめている。ダブステップとガラージを繋ぐNYのファルティDLや、〈ダンスホールのマイク・スキナー〉とも称されるトドラTなど、ダンスフロアの最先端へと鮮やかに切り込む作品を次々と送り出しているのだ。そして、そんな勢いに乗るニンジャ・チューンから、またも注目すべき作品が届けられた。それが、DJフードの11年ぶりとなるオリジナル・アルバム『The Search Engine』である。

そもそもDJフードとは、ニンジャ・チューンを立ち上げたデュオ、コールドカットの変名プロジェクト。だが、94年にストリクトリー・ケヴとPCがニンジャ・チューンに加入したことをきっかけに、DJフード名義の作品は4人で手掛けることとなる。それが90年代後半になると、コールドカットが自身の名義での活動に専念しはじめ、DJフードはケヴとPCのプロジェクトへと移行。そして、そんな〈2代目DJフード〉とも呼べる二人による初にして唯一のアルバムが、2000年に発表された『Kaleidoscope』だ。同作で聴くことができたのは、まさにコールドカット譲りの大胆なカットアップと、ユーモア精神溢れる自由な展開や楽しげなサウンド。そのタイトル通り、万華鏡の如くクルクルと表情を変える、最高に愉快なアルバムだったと言えるだろう。だが、その後、PCはシネマティック・オーケストラの活動に専念するため、DJフードを離脱する。事実上、DJフード=ケヴのソロ・プロジェクトになったのだ。

『Kaleidoscope』以降も、デザイナーとしての活動やDJミックス作品の発表などで多忙に過ごしていたケヴだが、2009年からふたたびEPのリリースを開始。そして、ここ数年の3枚のEPを中心にまとめ上げられたのが、『The Search Engine』である。このアルバムは、11年ぶりの新作に相応しい、新鮮な驚きに満ちた作品だ。ロック的なダイナミズムが漲る豪快なビート、ファズが効いたヘヴィーなベースライン、そして東洋〜中東的な上モノが醸し出すサイケデリア——まるで〈ブレイクビーツとサイケデリック・ロックの出会い〉とでも呼べそうな、従来のファンの意表を突く新機軸を打ち出している。また、元ザ・ザのマット・ジョンソンや、ノイズ/アヴァンギャルド界の大物であるJG・サールウェルなど、ケヴが若き日に憧れていたであろう80年代のヒーローたちをゲストとして引っ張り出していることからも、本作にかけるケヴの気合いのほどが窺えるだろう。

昨年、ニンジャ・チューンの20周年記念イヴェント〈Ninja Tune XX〉に際したインタヴューで、「リリース・スパンに捉われず、本当に作りたいものだけを作る」と話していたケヴだが、本作はそんな彼の言葉に偽りがないことを証明するようなアルバムである。何しろ、この作品からは、ケヴが本当に興奮しながら作り上げたからこそ生まれたのであろう、凄まじいエネルギーや勢いに満ち溢れているのだ。最近のカッティング・エッジな新鋭のリリースでニンジャ・チューンを知ったという若いリスナーも、本作が放出する尋常ではない熱量には、間違いなく圧倒されてしまうに違いない。



▼DJフードの作品を一部紹介。

左から、2000年作『Kaleidoscope』、2007年のDKとのミックスCD『Solid Steel Presents Now, Listen Again!』、2008年のミックスCD『You Don't Know: Ninja Cuts DJ Food's 1000 Masks Mix』(すべてNinja Tune)

 


▼『The Search Engine』に参加したアーティストの関連盤を紹介。

左から、ザ・ザの2000年作『NakedSelf』(Nothing/Interscope)、フィータスの88年作『Thaw』(Self Immolation)、ナチュラル・セルフの2009年作『My Heart Beats Like A Drum』(Tru Thoughts)

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年12月16日 19:50

更新: 2011年12月16日 19:50

ソース: bounce 338号(2011年11月25日発行)

文/小林祥晴

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